
開業や移転、周年、昇進など、ビジネスの節目を華やかに彩る胡蝶蘭。整然と並ぶ白い花には、贈り手からの祝福や応援の気持ちが込められています。一方、花が終わった後の扱いに悩む企業も少なくありません。「まだ鉢は残っているけれど、どう処分すればよいのだろう」「せっかくいただいた花を、そのまま捨てるのは忍びない」。そんな戸惑いを感じたことがある担当者もいるのではないでしょうか。
ロスフラワー®の再生に取り組む株式会社RINは、法人や事業所に贈られた胡蝶蘭を回収し、お香やルームフレグランスなどへ生まれ変わらせる「RIN Nature Return」を開始しました。祝いの場で役目を果たした花を、香りという新しい形に変えて、受け取った企業へ戻すプログラムです。廃棄を減らすだけでなく、花に込められた記憶を残す選択肢にもなりそうです。
華やかな贈答花の先にある、花後の課題
胡蝶蘭は、開業祝いや周年行事、昇進などの贈答花として広く親しまれています。国内の洋蘭市場は500億円前後とされる一方、花が終わった後の再利用は限られており、多くは堆肥または可燃ごみとして処分されています。
花全体の廃棄数は、年間約10億本ともいわれています。まだ美しさが残っている花や、別の素材として活用できる植物も廃棄の対象となることから、近年は「ロスフラワー®」という言葉とともに、花を最後まで生かす取り組みへの関心が高まっています。
RINはこれまで、廃棄予定の花の買い取りをはじめ、空間装飾への転用、ノベルティへの加工、企業との商品開発などを手がけてきました。今回対象としたのは、法人が受け取る機会の多い胡蝶蘭です。回収と処分だけで完結させず、その後の製品化までを一つの仕組みにしています。

「回収して終わり」ではない、香りとしての還元
「RIN Nature Return」の大きな特徴は、回収した花そのものを原料として活用し、依頼企業のための製品に加工して戻す点です。受け取った胡蝶蘭が、お香やルームフレグランスなどに姿を変え、再び社内で活用されます。
祝い花には、開業や移転といった企業の節目と、贈り手との関係が刻まれています。その花を香りとして残すことで、単なる廃棄物の再利用にとどまらず、出来事の記憶を引き継ぐプロダクトにもなります。
完成品は、企業のロゴを入れたパッケージにも対応します。受付や来客スペースで使うほか、取引先や株主に配るノベルティとしての活用も可能です。廃棄削減への取り組みを、目に見える形で社内外へ伝えられる点も、法人向けプログラムならではの特徴でしょう。
回収から製品化までをつなぐ一連の流れ
利用にあたっては、まず企業からRINへ問い合わせを行い、回収する胡蝶蘭の量や希望する製品、ロット、パッケージなどを相談します。その後、対象となる花を回収し、乾燥や加工、香りの設計といった工程を経て、完成した製品が依頼企業へ納品されます。
花を回収する事業と、香りの商品を製造する事業が切り離されていると、企業側には複数の事業者との調整が必要になります。同プログラムでは、回収からアップサイクル製品の納品までが一連の流れとして用意されているため、企業が参加しやすい形になっています。
RINには、ホテルで役目を終えた装飾花を使ったプロダクト開発や、未利用素材を活用した化粧品会社との共同開発などの実績があります。これまで培った植物資源の活用方法を、法人の祝い花にも広げた取り組みといえます。

花だけにとどまらない、植物らしさを伝える香り
開発が進められているのは、ルームフレグランスやリードディフューザー、お香、香水などです。香りには花の印象だけでなく、植物が持つグリーン感やウッディなニュアンスも取り入れ、胡蝶蘭の新たな魅力を表現するとしています。
目で楽しむ花から、空間に広がる香りへ。姿は変わっても、植物がもたらすやすらぎや、その場の印象を整える役割は受け継がれます。オフィスの受付や応接室に置けば、来訪者との会話が生まれるきっかけにもなるかもしれません。
ルームフレグランスは最小100本、お香と香水は最小300個から対応します。サンプル費用は別途必要ですが、梱包デザインは自由に相談できます。使用する花の種類は希望どおりにならない場合があり、具体的なロットや料金については個別相談となります。

祝福の記憶を、企業が参加できる循環へ
「RIN Nature Return」が示しているのは、不要になった花を別の商品に変えるだけではなく、贈られた企業自身が資源循環に参加できる仕組みです。花の回収から製品化、さらに社内外での活用までがつながることで、サステナビリティ活動も身近な行動として捉えやすくなります。
祝い花は、役目を終えれば処分するものと考えられがちです。しかし、そこに残された植物としての素材や、贈り手の思いまで見つめ直すと、花後にもさまざまな可能性が見えてきます。香りとして戻ってきた胡蝶蘭は、節目の日の空気や人とのつながりを、さりげなく思い出させてくれる存在になるでしょう。
RINは今後、フレグランスをはじめとする植物資源の活用方法を開発し、企業や地域、パートナーとの連携を広げる方針です。胡蝶蘭から始まるこの循環が、桜をはじめとしたほかの植物にも広がれば、都市で役目を終えた花と人との関係を、少し長くつなぐ選択肢になりそうです。

