全国22自治体がつながる「ノーコード宣言シティー」 成功も課題も分かち合った高知の3日間
参加者による記念撮影(高知市役所 会議室にて)

自治体の窓口や庁内業務では、住民ニーズの多様化や人材不足への対応が求められる一方、デジタル化を進めるための専門人材や予算が十分とは限りません。新しい仕組みを導入しても、現場に定着させ、実際の業務改善へ結びつけるまでには、さまざまな壁があります。こうした課題に対する選択肢のひとつとして注目されているのが、専門的なプログラミング知識がなくてもアプリケーションなどを開発できる「ノーコード」です。

一般社団法人ノーコード推進協会(NCPA)は2026年8月21日、高知市と「ノーコード宣言シティーサミット 2026 in 高知」を共催しました。全国の自治体が成功事例だけでなく、失敗や悩みも持ち寄り、地域を越えて学び合う機会となりました。

全国22自治体まで広がった「宣言」の輪

「ノーコード宣言シティー」は、ノーコードツールの活用を通じて自治体のDXを後押しするため、NCPAが2023年5月から展開しているプログラムです。

ノーコードでは、ソースコードを一から書かずにアプリケーションやWebサービスを開発できます。専門的なプログラミングスキルを持たない職員でも、自分たちの業務に合った仕組みを考え、改善に取り組みやすい点が特徴です。

NCPAが重視しているのは、単にツールを導入することだけではありません。職員自身が課題を見つけ、改善方法を考え、デジタルの力で業務や行政サービスを変えていく「ノーコード思考」の普及も進めています。

2024年に初めてサミットが開かれた当時、宣言自治体は15自治体でした。その後、取り組みに賛同する地域が増え、現在は北海道から九州まで全国22自治体へと広がっています。

11自治体が高知に集った学び合いの場

今回のサミットには、宣言自治体のうち11自治体が現地またはオンラインで参加しました。現地には愛知県設楽町、愛媛県西予市、高知県須崎市、高知市の職員が集まり、北海道旭川市や山梨県富士吉田市、福岡県直方市、熊本県小国町などもオンラインで加わりました。愛媛県今治市もオブザーバーとして参加しています。

開会には高知市の桑名龍吾市長も出席しました。高知市は2025年3月に「ノーコード宣言シティー」を表明し、2026年度からkintoneを正式に導入しています。同年7月には、100人を超える職員が参加するハンズオン研修も行われました。

桑名市長は、職員による自律的な業務改善が働き方改革やワークエンゲージメントの向上につながり、その先には市民のウェルビーイング向上もあるとの考えを示しました。自治体同士が経験を共有することへの期待も語っています。

完成した成功事例だけではない「現場のリアル」

会場で共有されたのは、導入したツールや完成済みの成功事例だけではありませんでした。庁内の関係者をどのように巻き込んだのか、最初の一歩をどこから始めたのか、職員の意識をどう変えたのかといった、実践の途中で生まれた経験にも焦点が当てられました。

グループディスカッションでは、人材の確保、庁内での理解促進、ツールの定着、ベンダーとの関係など、各自治体が直面している課題について率直な意見交換が行われました。地域や自治体の規模が異なっていても、共通する悩みは少なくありません。

参加者からは「同じような悩みを抱えている」「自分たちでも取り組めそう」といった声が聞かれました。一つの自治体だけで答えを探すのではなく、他地域の試行錯誤も参考にすることで、次の行動を考えやすくなったようです。

また、NCPA副代表理事の森戸裕一さんによる特別講演では、生成AIをはじめとする技術が進化するなか、地域や行政がどのように変わっていくべきかが取り上げられました。ノーコードを単独の技術として見るのではなく、これからの自治体DXを考える広い視点に触れる機会となりました。

NCPA副代表理事の森戸裕一さんの講演風景

「知る・考える・実践する」をつないだ3日間

今回の取り組みは、8月21日のサミットだけで完結するものではありませんでした。8月20日から22日までの3日間にわたり、研修、業務改善検討会、勉強会が連続して開かれ、延べ約80人が参加しました。

初日の自治体DX・ノーコード合同研修には、高知市職員のほか、高知県内の市町村や県外自治体の職員も参加しました。ノーコードやAIが自治体や地域社会にもたらす変化、基礎知識、実際の業務改革事例などを学び、翌日の交流へつなげました。

サミット当日の午前には、高知市の実際の取り組みや業務課題を題材にした業務改善検討会を開催。自治体が変われば、同じ行政業務でも進め方や考え方は異なります。他自治体の視点を取り入れることで、これまで当たり前だと思っていた業務を見直す場となりました。

最終日の勉強会では、NCPA会員企業の技術者や有識者も交え、より具体的なノーコード活用を検討しました。サミットで「知る」、対話を通じて「考える」、勉強会で「実践につなげる」という流れが組まれています。

NCPA代表理事の中山五輪男さんの講演風景
NCPA地方創生部会長の佐藤貴憲さんの講演風景
ノーコード合同研修会の会場の様子

開催地域にも残された新たなつながり

高知市DX推進課は、kintoneの活用を始めた時期に、他自治体の成功事例や課題を多くの職員が直接聞けたことを大きな収穫として挙げています。地方自治体という共通の立場だからこそ相談できる悩みもあり、今後の方向性を考えるうえで有意義な3日間になったとコメントしました。

全国規模のイベントを地方都市で開くことには、開催地域の職員が参加しやすくなる利点もあります。今回は高知市だけでなく、県内市町村が一緒に学ぶ機会も設けられました。サミットが全国の事例を紹介する場にとどまらず、開催地域のDXを身近なところから進めるきっかけにもなったことがうかがえます。

宣言の数よりも大切な「経験を共有する仕組み」

自治体DXという言葉からは、大がかりなシステム導入や専門人材による改革を想像しがちです。しかし今回のサミットから見えてくるのは、現場の職員が身近な課題を見つけ、自分たちで改善を重ねていく姿でした。成功した方法だけでなく、途中でぶつかった壁や現在も残る悩みまで共有された点も印象的です。

人材や予算が限られるなか、すべての自治体が同じ試行錯誤を繰り返す必要はありません。ある地域で得られた経験を別の地域が参考にできれば、小さな改善の積み重ねを次の実践へつなげやすくなります。「ノーコード宣言シティー」が、宣言自治体の数を増やす取り組みから、互いに相談し学び合うネットワークへ変化していることに、今回の3日間の大きな意味がありそうです。

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