
街の清掃活動と聞くと、早朝に住民や企業が集まり、黙々とごみを拾う光景を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。きれいな街を保つために欠かせない活動である一方、環境への関心が高い人だけが参加するものになりやすく、取り組みを継続しながら輪を広げていく難しさもあります。
そこで注目したいのが、清掃にスポーツや音楽、交流の楽しさを組み合わせる試みです。株式会社エルコムは2026年9月12日、北海道放送、コンサドーレ、クリーンオーシャンプロジェクトとともに、札幌・すすきののCOCONO SUSUKINOで「すすきの CLEAN OCEAN PROJECT 2026」を開催しました。「すすきのを、世界で一番キレイな歓楽街へ。」を合言葉に、市民約200人と34団体が街から海を守るための一歩を踏み出しました。
20団体から34団体へ、街に広がった共創の輪
「すすきの CLEAN OCEAN PROJECT」は今回が2回目となります。2025年に行われた前回は152人が参加し、20団体が参画しました。今回は参加希望者が約400人に達し、その中から抽選で選ばれた約200人が参加。参画団体も前年の約1.7倍となる34団体へ増えました。

企業だけでなく、行政、スポーツ、メディア、地域団体など、普段は異なる分野で活動する組織が「街から海を守る」というテーマのもとに集まった点が特徴です。一つの企業による清掃活動から、地域のさまざまな人や組織が関わる取り組みへと、活動の輪が着実に広がっている様子がうかがえます。
当日は晴天に恵まれ、参加者がすすきのの街を歩きながら清掃に取り組みました。歓楽街のにぎわいを支える人々が同じ目的を持って街を見ることで、普段は通り過ぎてしまう場所や、見落としがちなごみにも目を向ける機会となりました。

ごみ拾いを「楽しい体験」に変える多彩なプログラム
会場では、単にごみを集めるだけではなく、環境活動を身近に感じられるさまざまなプログラムが展開されました。その一つが、ごみ拾いにスポーツの要素を取り入れた「スポGOMIワールドカップ~北海道STAGE~」です。13チーム、39人が参加し、競技として街の美化に挑みました。

アイドルグループ「タイトル未定」のメンバーと一緒に行うごみ拾いのほか、株式会社コンサドーレの横野純貴さんを迎えたトークセッション、スペシャルライブ、環境共創ブースなども実施されました。スポーツや音楽を入り口にすることで、環境活動に馴染みのない人でも参加しやすい場がつくられています。


当日は45リットルのごみ袋で400個分を回収しました。清掃活動を「我慢して参加するもの」ではなく、誰かと楽しみながら取り組める体験へ変えていく工夫は、継続的な参加や新たな関心につながりそうです。

拾った先まで考える、キャップから生まれたチャーム
今回のもう一つのテーマは、ごみを拾った後の行方です。会場では、エルコムが開発した国産スマートリサイクルステーション「Reebo(リーボ)」で回収したペットボトルキャップを使い、オリジナルの「フィッシュフックチャーム」が制作されました。
集められたキャップは洗浄と色分けを経て、細かく破砕された後、新しい形へとアップサイクルされます。完成したチャームは参加者へプレゼントされ、捨てられるはずだったものが、人の手と技術によって別の価値を持ち、再び人のもとへ戻っていく流れを伝えました。



通年で回収されたペットボトルキャップは約1,700個、重さにして約3.5キログラムです。
ごみを減らすだけで終わらず、回収したものを資源として捉え、新たな商品やサービス、仕事、企業同士の連携へつなげていくことも、このプロジェクトが目指す姿です。環境課題への対応を単なるコストとして考えるのではなく、地域に新しい経済価値を生み出すきっかけへ変えていこうとしています。

環境と経済、エンタメをつなぐ地域共創のかたち
エルコムの相馬嵩央社長は、環境活動を一過性のものにしないためには、環境意識だけに依存しない仕組みが必要だと説明しています。企業にとっては技術や商品を社会へ届ける機会となり、地域や商業施設には人が集まり、新たな交流が生まれます。市民にとっても、スポーツや音楽を楽しみながら環境について考えるきっかけになります。
「環境のために経済を犠牲にする」のではなく、環境課題の解決を地域や経済の新しい価値へつなげていくことが、このプロジェクトの目指す方向です。参画団体が20団体から34団体へ増えたことからも、環境、経済、エンターテインメントを組み合わせた取り組みに対する地域の共感が見えてきます。

立場の異なる人々がそれぞれの強みを持ち寄れる仕組みは、活動を無理なく続けるうえでも大切です。楽しさから生まれた関心が、街や資源への見方を少しずつ変えていくのかもしれません。

ごみ箱を「資源箱」へ変える日常への挑戦
活動は年に一度のイベントで終わるものではありません。エルコムは今後、賛同する企業や団体との連携を広げながら、街中での資源回収や分別、アップサイクル、環境啓発を日常の仕組みとして育てていく方針です。
その入口となるのが「Reebo」です。ごみや資源の蓄積状況をセンサーで把握し、街中での回収状況をデータによって見える化します。一定期間における利用回数は累計16,372回に上り、分別や圧縮にも活用されました。
目指しているのは、ごみ箱を単なる廃棄場所ではなく、循環の始まりとなる「資源箱」へ変えることです。観光客の増加などによって街のごみが増える中でも、回収の仕組みが日常に残れば、イベントをきっかけに生まれた意識や行動を継続しやすくなります。

楽しさから始まる、街と資源の新しい関係
約200人が街を歩き、400袋分のごみを集めた今回の活動。数字の大きさとともに印象に残るのは、ごみ拾いをスポーツや音楽と結び付け、参加する時間そのものを楽しい体験にしている点です。さらに、拾った後の資源をチャームへ生まれ変わらせることで、清掃、分別、再利用という一連の流れも分かりやすく伝えています。
環境問題は規模が大きく、個人にできることが見えにくいテーマでもあります。しかし、好きなスポーツや音楽、地域の催しを入り口にすれば、自分にも関係のあることとして捉えやすくなります。「世界で一番キレイな歓楽街」という大きな目標も、一人ひとりが街を見る小さな変化から近づいていくのかもしれません。すすきので始まった取り組みが日常に根付き、ほかの地域にも無理のない形でつながっていくのか、今後が気になるところです。

