福井の現役職員と若者が政策を共創、72人が参加した「Fukui Future Summit」
「Fukui Future Summit」キャリアデザイン編の集合写真

地域の未来について考えるとき、そこで暮らす人の声はもちろん、地域の外から寄せられる新しい視点も大切です。しかし、若者が行政の取り組みや地域課題を具体的に知り、現役の自治体職員と一緒に解決策を考える機会は、まだ身近なものとはいえません。

行政の仕事についても、「具体的に何をしているのか分かりにくい」「自分の進路や関心とどう結びつくのか想像しづらい」と感じる学生は少なくないでしょう。そんな行政と若者の距離を縮める取り組みとして、福井県は2025年9月から11月にかけて「Fukui Future Summit」を開催しました。大阪・東京・福井の3拠点に計72人が集まり、キャリアやウェルビーイングについて考えながら、福井県が実際に抱える課題を題材に政策立案へ取り組みました。

3つの会場をつないだ若者と行政の接点

「Fukui Future Summit」は福井県が主催し、自治体や企業と若者をつなぐ活動を行う一般社団法人Re-Generationが運営を担当しました。

プログラムは、大阪・東京で行われた「キャリアデザイン編」と、福井で行われた「政策立案編」の2部構成です。参加者は学生を中心に計72人で、キャリアデザイン編に42人、政策立案編に学生25人と社会人5人の計30人が参加しました。

特徴的なのは、福井県庁の「ディレクター制度」のもとで活動する現役職員が、自ら担当している課題をテーマとして持ち込んだ点です。参加者は架空の地域課題ではなく、行政の現場で実際に向き合っているテーマについて、職員から直接話を聞きながら考えました。

「Fukui Future Summit」政策立案編の集合写真

自分のウェルビーイングから考えるキャリア

キャリアデザイン編は、2025年9月14日に大阪の「NORIBA10」、10月19日に東京の「ふくい南青山291」で開催されました。テーマは「自分にとってのウェルビーイングを知る」です。

福井県庁の幸福実感ディレクター・飛田章宏さんと、人財発掘ディレクター・倉田翔平さんによるレクチャーに続き、参加者は「知る」「デザインする」「拡げる」という3段階のワークショップに取り組みました。

自分が幸福を感じた経験を振り返って言葉にすることで、仕事や肩書だけにとらわれず、どのような状態で暮らしたいか、どのような形で社会と関わりたいかを考える時間となりました。行政の取り組みを知るだけでなく、自分自身の価値観へ目を向けるところから始めたことも、このプログラムの特徴といえそうです。

幸福実感ディレクター 飛田章宏さんによるレクチャー
人財発掘ディレクター 倉田翔平さんによるレクチャー
ワークショップ①「知る」:自分のウェルビーイング体験を言語化

ドローンから子育てまで、5つの課題を議論

2025年11月16日に福井県の「PLAYCE」で行われた政策立案編では、参加者が5チームに分かれました。扱われたのは、ドローンの利活用、歴史の魅力と発信方法、人財の発掘と活躍する組織、子育てのしやすい地域、ウェルビーイングな生き方と地域づくりという5つのテーマです。

いずれも福井県庁のディレクターが実際に取り組んでいる課題で、担当職員によるレクチャーを受けた後、各チームが課題の絞り込み、関係者の分析、政策の立案へと進みました。

例えば、地域の課題には住民だけでなく、行政や企業、学校などさまざまな立場の人が関わります。参加者は関係者同士のつながりを相関図にまとめながら、「誰が困っているのか」「どのような働きかけが必要なのか」を整理し、最後に考案した政策を発表しました。現場に立つ職員の言葉を起点にしたことで、行政の仕事をより具体的に捉える機会になったことがうかがえます。

福井県庁のこども応援ディレクター 武原智美さんによるレクチャー
ワークショップ①「課題デザイン」:チームで課題を1つに絞り込み
ワークショップ②「ステークホルダー分析」:関係者の相関図を作成

多様な意見から見えてきた地域との関わり方

参加者からは、福井県や県庁の取り組みを具体的に知り、地域活性化や政策への理解が深まったという声が寄せられました。また、グループでの議論を通して多様な視点や解決策に触れられたこと、ウェルビーイングについて考える経験が自身のキャリアや活動を見つめ直すきっかけになったことも紹介されています。

一般社団法人Re-Generationの代表理事・右近宣人さんは、行政の仕事には地域のために何ができるかを考えられる側面がある一方、その実像が若者へ十分に伝わる場が少ないと説明しています。地域課題をそのまま持ち込んだ今回の取り組みには、政策を若者にとっての「自分ごと」へ近づける意図が込められました。

一般社団法人Re-Generation 代表理事 右近宣人さん

2030年の福井を考える次の一歩

「Fukui Future Summit」は、2026年度も「ふくい未来創造サミット」として継続されます。福井県庁の政策担当者から地域づくりを学び、北陸・関西の同世代とともに2030年の未来社会を考える、全3回の1DAY政策立案ワークショップとして開催される予定です。

地域と関わる方法は、移住や就職だけではありません。まず課題を知り、現場の声を聞き、自分なりの考えを誰かと交わすことも、地域との大切な接点になります。今回の取り組みでは、キャリアや幸福について考える時間から、具体的な政策を組み立てる体験までが段階的につながっていました。行政職員が完成した施策を一方的に伝えるのではなく、検討中の課題を若者と共有した点も印象的です。異なる地域や立場の人が同じテーブルを囲み、現実の課題をともに考える経験は、行政への理解だけでなく、若者自身が将来の選択肢を広げるきっかけにもなりそうです。

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