
都市の建物に設けられた屋上緑地は、景観をやわらげるだけでなく、ヒートアイランド現象の緩和や生物多様性への配慮といった面でも役割を担っています。一方、植物を健やかに保つには継続的な水やりが欠かせません。あらかじめ決めた時間に散水する方法では、雨が降った後や土に十分な水分が残っているときにも水を与えてしまうことがあります。
植物の状態を損なわず、必要な分だけ水を届けることはできるのでしょうか。BH株式会社と戸田建設株式会社は、土壌センサーを活用したIoT潅水装置「AirRain® Eco(エアレイン エコ)」を屋上緑地で1年間運用。その結果、植栽を健全に保ちながら、年間潅水量を84.2%削減できたと発表しました。
3段階の土壌含水率で確かめた節水効果
実証は2025年8月から2026年7月まで、茨城県つくば市にある戸田建設筑波技術研究所のグリーンオフィス棟で行われました。対象となったのは、タマリュウとリュウノヒゲを植えた薄層屋上緑化です。
約41平方メートルずつの緑地3面に土壌センサーを設置し、潅水を始める土壌含水率の基準を、それぞれ40%、30%、20%に設定しました。土壌の水分量が設定値を下回った場合にだけ水を与え、定点カメラで植物の生育状態も観察しています。

その結果、従来のスケジュール制御による年間潅水量128.2立方メートルに対し、センサー制御では20.2立方メートルで緑地を維持できました。削減量は108.0立方メートル、削減率は84.2%です。

なお、比較対象となった2024年度と実証期間では集計期間や計測方法が異なります。また、節水効果は植物の種類や土壌、気象条件によって変わるため、84.2%という数値は今回の環境における結果です。
季節や降雨に合わせて変わる水やり
「AirRain® Eco」は、土に埋めたセンサーで水分量を測り、設定した基準を下回ったときだけ自動で潅水する仕組みです。雨の後など、土壌に十分な水分が残っている間は水やりを行いません。センサーと制御機器は無線で接続されているため、配線の負担を抑えながら運用できます。
実証では、高温や強い日射で土が乾きやすい夏季に潅水量が増え、冬でも降水量の少ない月には水やりが増えるなど、気象条件に応じた動きが確認されました。決まった時刻に一律で散水するのではなく、その時々の土の状態を基準にする点が特徴です。
最大92%減でも保たれた植栽の健やかさ
1平方メートルあたりの1日の潅水量は、従来のスケジュール制御では2.8リットルでした。これに対し、土壌含水率40%の設定では0.8リットルで71%減、30%では0.4リットルで87%減、20%では0.2リットルで92%減となりました。
水分量の基準を低くするほど潅水量は減りましたが、1年間の観察では、いずれの緑地でも枯れや生育状態の悪化は確認されませんでした。設定値の違いによる明確な生育差も見られなかったといいます。

BHは今後、土壌含水率をさらに引き下げた条件で検証し、節水効果と植栽への影響を調べる計画です。
「たくさん与える」から「必要な分だけ」への転換
屋上緑地を守るための水やりは欠かせませんが、水を多く与えればよいとは限りません。今回の実証で印象的なのは、土壌の状態を確かめながら必要なときだけ潅水することで、大幅な節水と植栽の維持が両立した点です。季節や降雨に合わせて自動的に水量が変わる仕組みは、担当者が毎回判断する負担の軽減にもつながりそうです。
一方で、適切な設定値は植物や土壌、設置環境によって異なります。今回の削減率をそのまま別の緑地へ当てはめるのではなく、それぞれの環境に合う基準を見つけることが大切です。都市の緑を減らさず、限りある水も無駄にしない。その両方を目指すうえで、感覚や一律の予定だけに頼らず、土の状態を見ながら水を届ける方法が、これからの緑地管理を考える一つの手がかりになりそうです。

