建設DXで重機を50km先から遠隔操作!「e建機®チャレンジ2026」で見えた建設現場の未来
会場(六本木・ウイングアーク1st本社)に集まった多くの業界関係者・来場者

建設現場では、熟練した技術者の不足や作業員の高齢化に加え、災害時の迅速な復旧、安全性の確保といった課題が重なっています。人が危険な場所へ立ち入らずに作業を進めるには、建設機械の遠隔操作や自動化が欠かせません。一方、現場ごとに地形や通信環境が異なる建設業では、技術を実際の施工へ取り入れる難しさもあります。

こうした建設業界の課題にデジタル技術で向き合うイベント「e建機®チャレンジ2026」が、2026年10月2日と3日の2日間にわたって開催されました。主催したのは、一般社団法人運輸デジタルビジネス協議会(TDBC)の建設・建機ワーキンググループです。六本木から千葉や北海道の建設機械を動かす超遠隔操作をはじめ、無人化施工の事例や学生による競技を通して、建設現場の新しい可能性が紹介されました。

実装事例から探る無人化施工と現場DXの未来

初日のテーマは「超遠隔施工がひらく、無人化施工の普及と現場DXの未来」です。官公庁や建設業界の関係者が集まり、遠隔施工や自動化施工の最新動向について、基調講演や実際の施工事例を交えた発表が行われました。

国土交通省の菊田一行氏による基調講演では、建設現場のオートメーション化を進める「i-Construction 2.0」の展望が説明されました。同省は、2040年度までに建設現場の省人化を少なくとも3割進め、生産性を1.5倍にすることを目標に掲げています。直轄工事で自動化施工や遠隔施工の活用が増えていることに加え、安全に運用するためのルール整備についても紹介されました。

技術が実証段階にとどまらず、実際の工事でどのように使われているのかを知る機会となりました。

危険な現場を支える遠隔操作とAI監視

施工事例では、旭建設、植村建設、西松建設、フジタの4社が、それぞれの現場で進める取り組みを発表しました。

宮崎県の旭建設が紹介した「天包プロジェクト」では、日向市の本社から56km離れた治山ダムの工事現場にあるバックホウを遠隔操作。自動運転のクローラダンプと組み合わせ、危険を伴う場所での無人化施工に取り組みました。さらに、1台のカメラで最大100mの範囲を監視するAIシステム「FOLLOW EYE」を運用し、作業員の工数を27.7%削減したとしています。

北海道の植村建設は、崩壊リスクのある床丹法面対策工事で、3Dマシンコントロール建機と移動オフィスを組み合わせた事例を紹介しました。同社は、遠隔施工を単純な作業速度で評価するのではなく、現場の条件を確認しながら、安全性と生産性を保つ技術として捉えています。

西松建設からは、山岳トンネルの全工程を無人化・自動化する「Tunnel RemOS」の現場事例や自律運転の実証、デジタルツインの成果が示されました。フジタは、土工における掘削、積み込み、運搬、敷きならし、転圧までを一連で自動化する施工技術を紹介しました。

遠隔施工の基調講演と旭建設、植村建設、西松建設、フジタによる実装事例の紹介
基調講演・遠隔施工実装事例(旭建設、植村建設、西松建設、フジタ)・関連技術紹介

産官学の議論で見えてきた普及への課題

日立建機、ARAV、ウイングアーク1st、EARTHBRAINからは、遠隔操作や自動化を支える関連技術が紹介されました。機械そのものだけでなく、通信、データ活用、現場の可視化など、複数の技術が連携することで無人化施工が成り立っていることが分かります。

遠隔施工の制度や運用、人材育成について議論する産官学の登壇者
産官学のキーパーソンが登壇したパネルディスカッションの様子

イベントでは初めて、産官学の関係者によるパネルディスカッションも実施されました。議題となったのは、技術の性能だけではありません。安全に使うための制度や運用方法、機械を扱う人材の育成など、普及に向けて避けて通れない課題について意見が交わされました。

遠隔施工を一部の先進的な現場だけでなく、より幅広い工事へ広げるには、企業や行政、教育機関がそれぞれの知識を持ち寄る必要がありそうです。

約50km先の重機に挑んだ学生たちの競技

2日目には、一般参加者や学生に向けた超遠隔操作の競技大会が行われました。東京・六本木に設置された特設コックピットから、直線距離で約50km離れた千葉房総技能センターにある、日立建機とコマツの油圧ショベル2台を同時に操作する競技です。

六本木のコックピットから千葉の油圧ショベルを遠隔操作する競技参加者
六本木高層ビルのコックピット(EARTHBRAIN/コマツ機・日立建機)から千葉フィールド実機を遠隔操作

順位は速さだけでは決まりません。安全確認、積載量の過不足を防ぐペイロード計測、作業時間を総合したTDBC独自の「生産性ポイント」で評価されました。実際の建設現場と同様に、正確さと安全性を保ちながら効率よく作業することが求められます。

学生重機部、KONAMI eスポーツ学院、プロeスポーツチーム「QTDIG∞」、重機シミュレーターアプリ「重機でGo」の予選通過者が参加した結果、学生重機部が優勝と準優勝を独占しました。優勝は東京大学の学生によるコンビ、準優勝は東京大学と東京女子大学の学生によるコンビです。大きなミスもなく、参加者が遠隔操作へ順応する様子が確認されました。

「e建機®チャレンジ2026」で受賞した学生重機部などの選手と箕輪はるかさん
学生重機部がワンツーフィニッシュ!各賞を受賞した選手たちと箕輪はるかさん

箕輪はるかさんが語った“重機の推し部位”

会場には、小型車両系建設機械の資格を持つハリセンボンの箕輪はるかさんも登場しました。日立建機の重機ファンコミュニティ「重機ファンダム」を主宰する猿山未華さんとの対談では、重機の魅力を独自の視点で紹介しました。

「e建機®チャレンジ2026」に登壇したMCのアリー氏と箕輪はるかさん
MCを務めたSPORTS MC アリー氏(左)とゲストのハリセンボン・箕輪はるかさん(右)

箕輪さんが挙げた“推し部位”は、ブーム、アーム、バケットを動かすシリンダーの連動や、屋外で光を反射するメッキロッドです。遠隔操作によって、将来はオフィスや自宅からも重機を動かせるようになれば、女性やゲームに親しむ若者など、これまで建設現場との接点が少なかった人にも活躍の機会が生まれると期待を寄せました。自身も「eジュキ」を宣言し、会場を盛り上げました。

遠隔施工が広げる建設業への新しい入口

今回のイベントで印象的なのは、遠隔施工が単なる「人の代わりとなる技術」として扱われていない点です。危険な現場から作業員を遠ざけること、省人化を進めることに加え、離れた場所から働ける環境をつくり、新しい人材が建設業へ参加する入口にもなり得ます。学生やeスポーツ関係者が実機の操作に挑戦した競技は、ゲームなどで培われた感覚が建設分野と結び付く可能性を身近に示しました。一方で、実際の現場へ定着させるには、安全ルールや通信環境、人材育成を含めた仕組みづくりが欠かせません。講演資料や競技映像が一般公開されたことで、現場の担当者だけでなく、建設業に関心を持つ学生や若者にも、技術の現在地を知る機会が広がっています。遠隔操作をきっかけに建設現場の働き方や担い手の姿がどのように変わっていくのか、今後も注目したいところです。

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