
生成AIの普及やデータセンターへの投資拡大、EV市場の成長などにより、半導体はさまざまな産業を支える存在になっています。その一方で、製造装置の操作や設備保全を担う人材の確保は、国内半導体産業の大きな課題です。専門的な技術が求められる現場では、知識だけでなく、実際の装置に触れながら安全な作業手順を身につける機会も欠かせません。
しかし、24時間稼働することも多い製造ラインでは、安定稼働や機密保持を優先する必要があり、未経験者が配属前に実機を使って学べる環境は限られています。そうした中、株式会社BREXA Technologyは、実践型の半導体人材育成施設「BREXA ACADEMY Semicon 四日市」を三重県四日市市に開所しました。四日市拠点では年間最大480名、国内の関連施設全体では年間約1,000名規模の育成を計画しています。
約14万人の需要に対して不足する実践教育の場
国内の半導体産業では、今後追加で約14万人の人材需要が見込まれています。特に必要とされているのが、設備保全や製造オペレーション、製造装置の立ち上げなど、現場の安定稼働を支える人材です。
こうした仕事を担うためには、半導体に関する基礎知識に加え、装置の扱い方や安全管理、設備運用などを実践的に学ぶ必要があります。一方、実際の製造現場では装置の停止や作業ミスを避けなければならず、未経験者の研修に使える時間や設備には制約があります。
BREXA Techは、未経験者や経験の浅い人材を採用し、専門的なスキルを育てたうえで各産業へ送り出してきました。半導体分野でも、採用から基礎教育、実機研修、就業先企業への人材供給までを一貫して担う仕組みを整えています。
半導体産業の集積地・四日市から始まる人材循環
新施設が開設された四日市市は、国内有数の半導体産業集積地です。企業が集まる地域の近くに研修拠点を置くことで、現場のニーズを踏まえた人材育成と、地域企業への人材供給を結びつけやすくなります。
施設では、自治体や産業支援機関、教育機関、地域企業との連携も進める予定です。地域で人を育て、その人材が地域の企業や産業で力を発揮する循環をつくり、企業の人材確保や雇用創出、関連産業の活性化につなげる考えです。
稼働する製造装置で学ぶ現場に近い研修環境
「BREXA ACADEMY Semicon 四日市」は、同社グループが展開する専門職能開発プログラム「BREXA ACADEMY」のうち、半導体分野に特化した研修施設です。
「BREXA ACADEMY」は、製造・技術をはじめとする幅広い領域で、未経験者を専門人材へ育成する職能開発プログラムです。専門講師による500種類以上の研修を通じて、半導体、製造、建設、医薬など、各分野で求められる知識や技術の習得を支援しています。実務に対応できる「即戦力」、資格取得や専門知識を伸ばす「専門性」、職種や業種を越えて活躍の場を広げる「マルチキャリア形成」の3つを柱としている点も特徴です。

施設内には半導体製造装置のコーター・デベロッパ装置をはじめ、真空引き装置、ユニット実習室、締結・配管研修用設備、クリーンルーム、イエロールーム、エアシャワーなどが整備されています。教育施設でありながら、稼働可能な半導体製造装置を使って学べる点が大きな特徴です。

研修内容は、半導体の基礎や製造工程から、工具を使った締結・配管作業、装置操作、真空引き、リークチェック、部品交換などの保全実習まで幅広く組み立てられています。10日間のメンテナンス研修と20日間のフィールドエンジニア・保全研修に加え、半導体エンジニアの仕事を体験できるインターンシップも用意されています。

最寄りのあすなろう鉄道・追分駅から徒歩約1分という立地を生かし、企業研修だけでなく、地域の学生に向けた見学や体験の機会にも対応する計画です。
企業研修から学生の体験まで広がる地域連携
福岡・大牟田と長崎・諫早の既存拠点では、2026年9月時点で445名が研修を受講しました。2026年度には590名の輩出を計画しており、企業ごとの作業手順に合わせた装置メンテナンス研修や、新卒者向けの保全研修なども展開しています。
教育機関との連携では、大学関係者による施設視察や、大学・高等専門学校向けのインターンシップを実施。自治体や産業支援機関の視察受け入れ、中学生向け就業体験への参画など、若い世代が半導体産業を知るきっかけづくりにも取り組んでいます。
代表取締役社長の山﨑高之さんは、同社が新卒者や未経験者を採用し、継続的なスキルアップとキャリア形成を支える「成長実現プラットフォーム」を運営していると説明しています。その中でも、人材の職能開発を担う「BREXA ACADEMY」に力を入れており、四日市の施設では、半導体製造の実機を使った技術研修や安全教育から、配属後の定着支援までを一貫して行う方針です。
こうした環境を通じて、意欲のある人が未経験から半導体分野へ進み、長く活躍できるよう支えていくとしています。また、地域の企業や行政、教育機関とも連携し、四日市で育成した人材を地域産業へ送り出す循環をつくることで、半導体産業の人材不足の緩和と地域経済の発展にも貢献したいとコメントしています。

「経験がない」を学びの機会へ変える育成拠点
半導体人材の不足を解消するには、経験者を探すだけでなく、未経験者が必要な知識と技術を身につけ、安心して現場へ進める道筋をつくることも大切です。「BREXA ACADEMY Semicon 四日市」は、実際に動く装置や現場に近い設備を用意し、配属前に手を動かしながら学べる環境を整えました。四日市だけで年間最大480名、国内3拠点で年間約1,000名という育成規模は、産業を支える人材の裾野を広げる一歩といえそうです。企業向け研修に加えて、学生の見学や就業体験にも活用されることで、半導体の仕事をより身近に知る機会も生まれます。地域の企業、行政、教育機関が育成の場を共有し、学んだ人が地域の産業へ進む流れをつくれるか。四日市を起点とする今後の連携が注目されます。

