
食事のあと、何気なくごみ箱へ入れている割り箸。その役目はわずかな時間で終わりますが、まだ使える木材として見れば、別の可能性が見えてきます。日本では年間およそ130億膳、260億本以上の割り箸が消費され、その多くが可燃ごみとして焼却されているといいます。身近な道具である一方、使用後の行き先を意識する機会は多くありません。
こうした中、サンシャインシティはChopValue Manufacturing Japanと連携し、池袋の大型複合施設「サンシャインシティ」で使用済み割り箸を回収する取り組みを2026年9月1日から本格的に始めました。集めた割り箸は家具や什器へと生まれ変わり、再び施設内で活用される予定です。
「廃棄物」だった割り箸を資源として扱う試み
使用済みの割り箸を継続的に回収して再資源化するには、単に分別箱を置くだけでは済まない難しさがあります。法制度上は「廃棄物」と判断される場合があり、民間企業が回収や運搬を続ける仕組みを構築しにくいためです。
サンシャインシティとChopValue Japanは、回収する割り箸の種類をはじめ、品質管理、保管、運搬、取引方法などを整理し、豊島区へ事前に相談しました。その結果、2026年6月、今回の仕組みでは使用済み割り箸を「有価物」、つまり資源として取り扱って問題ないとの見解を得ました。
これにより、対象となる割り箸を燃えるごみとして焼却するのではなく、分別・回収し、新たな製品へ活用できる道が開かれました。商業施設やオフィスビル、イベントホールなどを含む大型複合施設で、使用済み割り箸の回収からアップサイクルまでを行う取り組みは、サンシャインシティの調査では都内初とされています。

15種類の分別から見つけた新たな資源
年間3,000万人以上が訪れるサンシャインシティでは、施設から出るごみを15種類に分け、79%のリサイクル率を達成しています。そのなかで次の資源として着目したのが、飲食店やオフィスで毎日のように使われている割り箸でした。
回収後の加工を担うChopValue Japanは、カナダ・バンクーバーで設立されたChopValueの日本法人です。2024年には川崎市に国内初のフラッグシップ・マイクロファクトリーを開設しました。地域で集めた使用済み割り箸を独自の技術で再資源化し、テーブルや椅子、建材などへ加工しています。
同グループがこれまでに再利用した割り箸は、2億9,105万本にのぼります。遠方の大規模工場へ運ぶのではなく、地域の小規模な生産拠点で新たな製品へ変えることで、回収した地域へ再び戻しやすいことも特徴です。

割り箸を「有価物」として扱えるかどうかは、物の状態や排出状況、一般的な取り扱われ方、取引価値の有無などを踏まえ、自治体が総合的に判断します。今回は品質管理から運搬までの流れを明確にしたことで、継続的な回収と製品化が可能になりました。

約1万6,000本を集めた1か月間の試行
本格回収に先立ち、2026年7月27日から施設内9か所で回収トライアルが行われました。設置場所は、サンシャインシティのグループ事務所、水族館や展望台のスタッフ休憩室、専門店街アルパの従業員休憩室、オフィスワーカー専用ラウンジなどです。
回収対象は竹製とアスペン製の割り箸で、使用後に水洗いする必要はありません。専用の回収箱へ入れられるため、テナントの従業員やオフィスワーカーも日常の流れのなかで参加できます。

7月30日から8月1日まで開かれた「サンシャインシティ納涼盆踊り大会」の会場でも、来場者から割り箸を集めました。8月27日までに回収されたのは、竹製約1万1,000本とアスペン製約5,000本。合計約1万6,000本、重さにして約43kgとなり、CO2排出削減換算では約698kg-CO2eにあたるとされています。

試行では回収量だけでなく、ごみの混入状況や適切な回収頻度、回収箱の大きさなども検証されました。スタッフ休憩室ではおおむね正しく分別された一方、イベント会場ではほかのごみの混入や分別間違いが比較的多く、案内表示や箱の置き方に改善の余地が見つかりました。
自分が分別した一本がテーブルになる循環
トライアルで集めたアスペン製割り箸は、川崎市のマイクロファクトリーで実証用テーブルへ加工されます。完成は2026年10月頃を予定しており、サンシャインシティ内のオフィスワーカー専用ラウンジに設置される見込みです。
アスペンは柔らかく軽い木材で、強度や回収の手間、再製品化のコストなどから、リサイクルが難しいとされてきました。ChopValue Japanでも竹製割り箸を使った製品はすでに手がけていますが、アスペン製割り箸については実証段階にあります。

本格回収では、専門店街アルパ・スカイレストランやALTA内で割り箸を提供する飲食店5店舗も参加します。年間の回収見込みは70万本、約1.8トンです。
竹製の割り箸は什器や小物へ加工して施設内で活用し、アスペン製については製品化に向けた検証を続けます。今後は池袋エリアへ回収機会を広げ、使用済み割り箸から生まれた製品を地域内で活用することも目指しています。なお、家庭で使用した割り箸を施設へ持ち込むことはできません。
割り箸の循環に込めた両社の思い
ChopValue Manufacturing Japan代表取締役の山上剛史さんは、使用済みの割り箸が再びまちへ戻ってくる資源循環を、サンシャインシティとともに実現できることへの喜びを示しています。今回の連携を通じ、池袋から新たな循環の価値を広げていきたいとコメントしました。

サンシャインシティ総務部サステナビリティ推進室長の中山映未さんは、わずか数十分使った割り箸がテーブルへ生まれ変わることへの驚きが、取り組みのきっかけになったと説明しています。自分が分別した割り箸が家具となって戻ることで、日常の小さな行動と資源循環とのつながりを感じてもらいたいとしています。

小さな分別を実感できる形に変える仕組み
資源循環という言葉は少し大きく聞こえますが、今回の取り組みの出発点は、食事を終えたあとに割り箸を専用の箱へ入れるという小さな行動です。その一本一本が集まり、テーブルや什器となって同じ施設へ戻ってくれば、分別した先の変化を目で確かめられます。
回収量だけでなく、異物の混入や案内方法まで事前に検証している点も印象的です。資源を循環させるには、加工技術に加え、多くの人が無理なく参加できる仕組みが欠かせません。家庭からの持ち込みはできないものの、飲食店や職場、イベント会場など、普段過ごす場所で参加できることが継続のしやすさにつながります。
まずはサンシャインシティ内で始まった循環が、今後は池袋エリアにも広がることが目指されています。普段なら捨ててしまうものに別の役割を見つける経験は、暮らしのなかにある資源をあらためて見直すきっかけになりそうです。

