採用は「人とAI」でどう変わる?約600名が参加したTAカンファレンス

人材不足が多くの企業にとって身近な経営課題となるなか、採用活動にも大きな変化が求められています。求人を出して応募を待つだけでは、必要な人材と出会うことが難しい場面も増えてきました。候補者との接点を長期的に育てたり、自社の魅力を丁寧に伝えたりと、採用を継続的な取り組みとして捉える視点が重要になっています。

一方で、戦略づくりから候補者管理、社内への協力依頼まで、採用担当者が担う業務は少なくありません。こうした状況でAIは、どこまで人事を支えられるのでしょうか。株式会社TalentXは2026年7月2日、AIネイティブな採用とタレントアクイジションをテーマにした「Talent Acquisition Conference 2026」を開催しました。会場とオンラインを合わせて、企業の役員や採用担当者ら約600名が申し込みました。

欠員補充から脱する「タレントアクイジション」

「Talent Acquisition Conference」は、タレントアクイジションの考え方と実践手法を日本の採用市場に広めることを目的として、TalentXが主催しているカンファレンスです。2025年の初開催では400名が申し込み、今回が2回目となりました。

タレントアクイジション(TA)とは、欠員が出てから人材を探す短期的な採用にとどまらず、経営・事業戦略から必要な人材を定め、候補者を惹きつけながら中長期的な関係を築く取り組みです。人材との接点を一時的なものにせず、継続的な採用基盤へ変えていく点に特徴があります。

ただし、実践には候補者データの蓄積や継続的な情報発信、個別のコミュニケーションなど、多くの業務が伴います。そこでTalentXが提示しているのが、事務作業やデータ解析をAIが担い、人事が関係構築や意思決定、採用戦略の設計といった業務に力を注ぐ「AIネイティブ採用」です。カンファレンスでは、人とテクノロジーを組み合わせた採用のあり方が共有されました。

5つのセッションでたどる採用変革の現在地

当日は、オープニングを含む5つのセッションが行われました。TalentX代表取締役社長の鈴木貴史さんによるオープニングセッションでは、労働人口の減少とAIの進化を背景に、タレントアクイジションとAIネイティブ採用の必要性が語られました。

3つのライトニングトークでは、企業の具体的な事例が紹介されています。スカパーJSAT株式会社は、自社の「ありのまま」を伝えて理解を促す採用オウンドメディアの構築と、そのブランディング効果を取り上げました。

株式会社日立製作所は、過去に接点を持った約2,500名の候補者によるタレントプールを構築し、システムと人の力を組み合わせて30名を超える入社につなげた手法を共有。Astemo株式会社は、約1万5,000人を巻き込み、3年間でリファラル採用を約5倍にした取り組みを紹介しました。候補者との関係、自社らしい情報発信、社員の協力など、異なる方向から採用基盤を育てる事例が並びました。

世界標準と日本流から考えるTA組織の設計

スペシャルセッションには、鈴木さんに加え、株式会社サイバーエージェント常務執行役員CHOの曽山哲人さん、株式会社グロービス・キャピタル・パートナーズのディレクターである小野壮彦さんが登壇しました。

鼎談では、サイバーエージェントにおける実践例を交えながら、「世界標準のTA」と「日本流TA」という視点で議論が展開されました。日本企業がタレントアクイジションを取り入れる際に直面する壁や、AIネイティブ時代のTA組織、これからのHRリーダーに求められる役割などが主なテーマです。

制度やツールを導入するだけでなく、それぞれの企業文化や組織の状況に合わせて、採用の体制そのものを設計する必要性がうかがえるセッションとなりました。

登壇者との交流と最新AIを体験する場

セッション終了後には、会場で参加者と登壇者によるネットワーキングイベントも開かれました。参加者同士が名刺を交換し、それぞれが抱える採用課題や実践方法について意見を交わす姿が見られたといいます。

会場内には「最新AI体験ブース」も設置され、TalentXが展開する統合型タレントアクイジションプラットフォーム「MyTalent Platform」の新機能が披露されました。講演から知識を得るだけでなく、AIを活用した採用業務を具体的にイメージし、同じ課題を持つ人とつながれる機会になったようです。

満足度94.2%、次に始めたい採用改革

開催後に行われたアンケートでは、有効回答191件のうち94.2%がイベントに満足したと回答しました。

採用上の課題や関心事項を尋ねた設問では、「全社を巻き込んだ採用(リファラル)」「採用ブランディング」「AI・テクノロジー活用」「タレントプール」の4項目が、いずれも約50%前後となりました。特定の手法だけに関心が集まったのではなく、自社で持続的に人材を獲得するための基盤づくりが幅広く意識されていることがわかります。

「明日から始めたいアクション」で最も多かったのは「自社採用基盤の構築」でした。続いて「全社の巻き込み」「AI活用」「採用戦略再設計」が挙げられています。参加者からは、各社の事例によって今後取り組むべき施策や手順が明確になったこと、TAの意味と重要性を理解できたことなどを評価する声が寄せられました。

採用を経営と結び直す小さな一歩

今回のカンファレンスから見えてくるのは、AIに採用を任せるという単純な変化ではなく、テクノロジーを活用しながら、人が担うべき仕事を見つめ直す動きです。候補者との信頼関係を育て、自社の魅力を伝え、現場や経営層を巻き込むことは、効率だけでは測りにくい領域でしょう。その一方で、データ整理や定型的な作業をAIが支えれば、採用担当者がこうした役割に向き合える時間は増やせそうです。タレントプール、採用オウンドメディア、リファラル採用など、紹介された方法は異なりますが、共通しているのは採用を一度きりの活動にしないという視点です。すべてを一度に変えるのではなく、自社に必要な人材や現在の接点を整理することが、経営戦略とつながる採用への小さな一歩になるのかもしれません。

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