AI時代の要件定義はどう変わる?「AI要件定義サミット2026」に官民20社超が登壇

生成AIの活用が広がる中で、システム開発の現場では、コードを書く工程だけでなく、その前段階にあたる「要件定義」をどう変えるかにも関心が集まっています。関係者の認識をそろえ、現場の知恵を設計に落とし込み、手戻りを減らすことは、長く多くの組織で課題とされてきました。

そうした中、株式会社ROUTE06は2026年6月11日、「AI要件定義サミット2026 〜AI要件定義が支える、カスタマイズ大国・日本のシステム設計の未来〜」を開催しました。初開催となる今回は、事業会社のIT・DX部門、SIer、SaaS企業のエンジニアやプロダクト関係者など約1,400名が来場し、官民のリーダー20社超が登壇する場となりました。

南場智子氏が語ったAI時代の組織づくり

基調講演には、ディー・エヌ・エー代表取締役会長の南場智子氏が登壇しました。テーマは「DeNAの目指すDelight創造エコシステム」で、約900名が集まる注目度の高いセッションとなりました。

南場氏は、AIによって生産性が大きく高まる一方、人がAIに指示を出し続けるような働き方になっている現状に触れました。隙間時間にもAIを動かしていないと不安になる心理を、人間の神経系に対する新しい挑戦として示し、精神的な健全性を保ちながらAIと向き合う必要性を語りました。

また、AIで時間が生まれても、その分だけ新しい仕事を作ってしまう可能性にも言及しました。単に既存業務を楽にするのではなく、業務プロセスそのものをAIネイティブに組み換え、不要な仕事を見極めることが重要だとしています。AIアプリケーションの領域では、深い業務知識と変化に対応するスピードが欠かせないという視点も印象的です。

大手企業と行政が見た上流工程の課題

ホールAでは、大手企業や行政機関のキーパーソンによる6つのセッションが行われました。NTTデータグループは、生成AI活用からAI-Native開発へと進む中で、要件定義の質が品質や手戻りを左右する点を説明しました。

日立製作所は、関係者間の認識ギャップをどう埋めるかをテーマに、AIとローコードを組み合わせた合意形成の方法を紹介しました。内閣府規制改革推進室は、政府情報システム調達におけるアジャイル開発の導入促進について、制度設計の観点から課題と方向性を示しました。

日本IBMは、AI開発をブラックボックスにしないためのコンテキスト・エンジニアリングを取り上げました。IPAは、AIを前提としたシステム設計という観点から、要件定義や要求工学のあり方を見直す必要性を提示しました。

事業会社の現場で進むAI活用の実践

ホールBでは、製造、流通、インフラ、マーケティングなど、各業界の事業会社がAIと要件定義の実践事例を共有しました。イオンは、蓄積されたデータを現場の業務改善にどう生かすかをテーマに、データ活用基盤からAIエージェント実装までの設計思想を紹介しました。

大阪ガスは、人手不足や属人性といった構造的な課題に向き合いながら、AIを活用して事業スピードを高める開発組織づくりについて語りました。野村総合研究所とJR東海は、リニア中央新幹線をめぐる取り組みを題材に、事業者と変革パートナーという二つの視点から上流工程改革を説明しました。

Hakuhodo DY ONEは、AI駆動開発の視点から開発の前提を問い直し、金融機関の基幹システム開発における要件定義の変化を取り上げました。LayerXは、FDEとPlatformという二つのアプローチから、LLMとともに進化するプロジェクト推進の現在地を示しました。

スポンサー企業も多様な切り口を提示

ホールCでは、スポンサー企業によるセッションも行われました。KikuviはAIヒアリング自動化、セイコーソリューションズはAIによるプロジェクト推進、Polaris.AIはAI開発における要件定義の違いをテーマに登壇しました。

クラスメソッドは国内企業のAI活用実態、Findyは「要件定義からコンテキスト定義へ」という視点を紹介しました。ノベルワークス、ワークスアプリケーションズ、DGビジネステクノロジーズ、伊藤忠テクノソリューションズ、バクなども登壇し、上流工程をどう再定義するかについて、それぞれの立場から考え方を共有しました。

要件定義という言葉は一見専門的ですが、実際には「何を作るのか」「なぜ作るのか」「誰のために作るのか」をすり合わせる重要な工程です。AIが加わることで、その整理や合意形成のあり方が変わりつつあることが見えてきます。

属人化を越える学びの場として

今回のサミットからは、AI活用が単なる効率化の手段にとどまらず、要件定義という上流工程そのものを見直すきっかけになっていることが伝わってきます。特に、現場の暗黙知をどう共有し、組織の中で再利用できる形にしていくかは、多くの企業に共通するテーマといえそうです。官民や業界を越えて事例が並んだことで、課題の大きさと同時に、実践の選択肢も少しずつ広がっている印象です。AI時代のシステム設計を考えるうえで、要件定義に光を当てる場は今後も意味を持ちそうです。

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