
普段何気なく手に取る一枚のTシャツが、遠く離れた地域で暮らす誰かの支えになる。そんな買い物と社会貢献をつなぐ取り組みが、国や地域を越えて広がっています。大きな行動を起こすのは難しくても、日常の選択を通じて参加できる仕組みなら、平和や支援について考える入口をつくれるかもしれません。
ユニクロは2026年10月、シンガポールのホワイトストーン・ギャラリーで、チャリティTシャツプロジェクト「PEACE FOR ALL」の4年間の歩みを紹介するイベントを開催しました。会場では展示やトークセッションを通じて、緊急人道支援や教育・自立支援、困難を乗り越える地域の力を育む活動など、アジア各地へ広がる支援の成果が伝えられました。
1,184万枚のTシャツが生んだ35億円超の支援
「PEACE FOR ALL」は、平和を願い行動するという趣旨に賛同した著名人が、ボランティアでTシャツをデザインするプロジェクトです。2022年6月の開始から56組のコラボレーターが参加し、2026年8月末までの世界累計販売枚数は1,184万枚を超えました。

販売による利益は全額、貧困や差別、暴力、紛争などの影響を受ける人々を支える団体へ寄付されます。これまでの寄付総額は35億円を超え、17カ国で24のプロジェクトを支援してきました。
ファーストリテイリングでサステナビリティを担当する新田幸弘氏は、一人ひとりの小さな行動も、何百万人へ広がれば社会を変える力になると説明しています。身近な衣服をきっかけに、平和のための行動へ参加できる点が、この取り組みの特徴です。

思いやりを行動へ変える新たなコラボレーター
イベントには、俳優・モデルでユニクロ タイのブランドアンバサダーを務めるウッラサヤー・セパーバン氏が特別ゲストとして登壇しました。2027年には新たなコラボレーターとしてプロジェクトに加わる予定です。
セパーバン氏は、自身の経験を交えながら、創造性や思いやり、日々の小さな選択が平和につながることを語りました。誰もが認められ、支えられ、自らの力を発揮できる環境が、前向きな変化を生むという言葉からは、支援を受ける人の可能性に目を向ける姿勢がうかがえます。

アジア各地で届けられる機会と安心できる居場所
会場では、セーブ・ザ・チルドレンや国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)、プラン・インターナショナル、ディスプレイスメント・フィルム・ファンドと連携した活動も紹介されました。支援の内容は、緊急時の援助だけでなく、子どもや若者の教育、自立に必要なスキル、安全な居場所づくりなど多岐にわたります。
セーブ・ザ・チルドレン・タイのエリザベス・ティア氏は、子どもや若者に足りないのは才能や意欲ではなく、多くの場合は機会だと指摘しました。適切な環境と支援があれば、若者自身が地域をよりよくする力になれるという考え方です。

シンガポールの子どもたちへつなぐ新たな一歩
ユニクロ シンガポールは、地域の福祉活動を支えるコミュニティ・チェストと連携し、新しい支援を始めます。シンガポール国内で販売される「PEACE FOR ALL」Tシャツについて、販売価格の20%を同団体へ寄付します。
寄付金は、低所得世帯の子どもや家庭内暴力などの困難な環境に置かれた子どもを支える、2つのプログラムに活用される予定です。世界規模の支援と地域に根差した活動を組み合わせることで、買い物とその先にいる人々とのつながりが、より具体的に見えてきます。
建築家の視点を映した新作デザイン
日本では、建築家の隈研吾氏と藤本壮介氏が手がけた新作デザインも登場しました。「PEACE FOR ALL チャリティTシャツ」は2026年9月17日に発売され、価格は1,500円です。全国のユニクロ店舗とオンラインストアで展開されています。
異なる感性を持つコラボレーターの表現を通じて、平和という大きなテーマを身近に感じられることも、このプロジェクトならではの魅力といえそうです。

一枚を選ぶことから生まれる小さな参加
平和や人道支援は重要だと分かっていても、個人が日常生活の中で何をすればよいのか、迷うことは少なくありません。「PEACE FOR ALL」は、誰もが使うTシャツを、その最初の一歩へと変えている取り組みです。4年間で1,184万枚以上が販売され、寄付総額が35億円を超えたという数字からは、小さな選択が積み重なることで生まれる力の大きさが伝わってきます。一方で印象的なのは、寄付額だけでなく、その資金が安全な居場所や教育、生活の立て直しなど、地域ごとに異なる課題へ向けられていることです。服を選ぶ際にデザインや着心地だけでなく、その一枚がどこへつながるのかにも目を向ける。そんな無理のない参加の形が、平和を遠い話にせず、自分の暮らしから考えるきっかけになりそうです。

