累計寄附4億円・継続率100%の「電気のふるさと納税」、度会町など3者が再エネで持続可能な地域づくりへ

ふるさと納税の返礼品と聞くと、肉や魚、果物、工芸品など、その土地ならではの品を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。一方で、全国的に知られた特産品を持たない自治体にとっては、地域の魅力をどう伝え、継続的な応援につなげるかが課題となります。寄附先が毎年選び直される制度だからこそ、一度の寄附で終わらない関係づくりも大切です。

そうした中、三重県度会町、株式会社UPDATER、コスモエコパワー株式会社は、2026年9月24日、「度会町ふるさと納税事業『再エネ電力返礼品』パートナーシップに関する連携協定」を締結しました。地域で生まれた風力発電の電気を返礼品に活用し、寄附、再生可能エネルギー、まちづくりを結びつける取り組みです。

4年半の実績から始まる3者の新たな連携

度会町とUPDATERは2021年12月から、町内にある「度会ウィンドファーム」の再生可能エネルギー由来の電気を、ふるさと納税の返礼品として提供してきました。約4年半の累計寄附総額は4億円を超え、対象2,276件の継続率は100%、解約者はゼロとされています。集計期間は2021年12月10日から2026年6月30日までで、2026年9月の仕組み変更前の実績です。

新たな返礼品の仕組みでは、寄附額の30%が寄附者の毎月の電気料金に充当されます。利用には「みんな電力」との電力供給契約が必要で、充当額の有効期間やシステム登録料などの条件があります。返礼品として供給されるのは、再生可能エネルギー由来の電気に、再エネ指定の非化石証書が持つ環境価値を組み合わせた電気です。

毎月使う電気を介することで、寄附者と地域の接点が日常の中に残り続ける点が特徴です。単発になりやすい寄附を継続的なつながりへ変えられれば、自治体にとっては中長期的な施策を考える土台にもなります。今回の協定には、これまでの度会町とUPDATERに、電気の供給元であるコスモエコパワーが加わりました。

特産品だけに頼らない「顔の見える電力」

度会町は、清流・宮川と町の面積の8割を超える山林に囲まれた町です。その一方で、出生数の低下や都市部への人口流出という課題を抱え、ふるさと納税を地域と関わる人を増やす入口に位置づけてきました。

そこで地域資源として目を向けたのが、度会ウィンドファームでつくられる電気でした。UPDATERが運営する「みんな電力」は、電気の産地や発電方法を伝える「顔の見える電力」を掲げています。どこで、どのようにつくられた電気なのかを寄附者へ届けることで、目に見えにくい電気にも地域の物語を持たせています。

食品のように箱で届く返礼品ではありませんが、電気料金の負担を支えながら地域を応援できる身近さがあります。風や光など、各地に存在する再エネ電源を地域の魅力として伝える考え方は、特産品の知名度だけに左右されない選択肢になりそうです。

寄附から来訪へ、3者が担う4つの取り組み

協定の目的は、度会町の新たな魅力開発、脱炭素社会の実現、地方創生の推進です。度会町は寄附の受付と返礼品の登録、コスモエコパワーは度会ウィンドファームからの電力供給、UPDATERは電気の調達・供給、料金への充当、電力の由来を示すトレーサビリティ技術を担います。

今後は主に4つの連携を進めます。1つ目は、3者による情報発信を通じた寄附の拡大です。最初の取り組みとして、「みんな電力」アンバサダーの村山千夏さんが度会町長に話を聞く動画も公開されました。

2つ目は、度会町が「再エネのまち」であることや、町で生まれた電気が全国の家庭で使われていることの発信です。3つ目は、寄附者が町を訪れ、関わり続けたくなる機会づくりです。地域の行事や交流の場と再エネ電力返礼品を結びつける方法を検討します。

4つ目は、寄附金のまちづくりへの活用と、電気にとどまらない地域SXへの展開です。寄附は子育て、教育、福祉などに使われるほか、イベント運営の脱炭素化や、地域産品の価値を可視化する取り組みも視野に入っています。返礼品をきっかけに生まれたつながりを、実際の来訪や地域活動へ広げようとする流れです。

度会町ふるさと納税事業「再エネ電力返礼品」パートナーシップに関する連携協定のイメージ

再エネが寄附と地域産品をつなぐ未来図

3者は今後、寄附によって得られた財源を地域の新たな再エネづくりに生かす構想を示しています。例として挙げられているのが、茶畑や田んぼの上で発電するソーラーシェアリングや、地域内の再エネ電源の拡充です。

さらに、UPDATERが展開する、生産工程を証明・可視化する「TADORi CHAiN」の活用も検討されています。伊勢茶や米などについて、地域の再エネ100%の電気でつくられたことを見える形にし、環境価値を備えた地域産品として伝える構想です。ただし、これらは現時点では今後の構想であり、詳細は3者で検討していく段階です。

「度会モデル」の描く未来図

毎月使う電気が育てる、地域との長い関係

度会町の取り組みで印象的なのは、形のない電気を地域資源として捉え、日々の暮らしと地域への応援を結びつけた点です。累計寄附4億円、継続率100%という実績は、返礼品の目新しさだけでなく、毎月使うものだからこそ関係が続きやすい可能性を示しています。今回の協定により、自治体、電力を届ける事業者、地域で発電を担う事業者の役割も分かりやすくなりました。寄附が子育てや教育、福祉に活用され、さらに再エネづくりや地域産品の価値向上へ循環していけば、町を知る入口は少しずつ増えていきます。全国の自治体へそのまま当てはめられるものではありませんが、身近にある風や光を地域の魅力として見直す発想は、人口減少や財源確保に向き合う地域にとって、参考になる一つの形といえそうです。選ぶ電気が遠くの地域との関係を育てる、そんな日常に根ざした地域支援の広がりにも注目です。

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