
身近な場所で人型ロボットを見かける機会は、まだ多くありません。しかし、歩く、見る、聞く、話すといった動きを組み合わせ、現実の環境で人を支える「フィジカルAI」の開発は着実に前へ進んでいます。その可能性を確かめるには、シミュレーションだけでなく、実機に触れながら試行錯誤する場が欠かせません。
そんなロボット開発の現在地を映すイベントが、東京・渋谷で開かれました。合同会社Orboh-JapanとRobotMateHubは2026年7月11日、12日の2日間、二足歩行ヒューマノイドロボット「Unitree G1」を使ったハッカソン「Humanoid Hack Tokyo 2」を開催。選考を通過した6チーム24名が、介護や防災、除雪など、暮らしに身近な課題へ実機で挑みました。
236名が関心を寄せた実機開発の2日間

会場となったのは、東京・渋谷の「GMOヒューマノイド・ラボ 渋谷ショールーム」です。第1回の終了から約1カ月半で迎えた今回は、事前登録者が前回の2倍を超える236名に達しました。Day2の観覧チケット36席も、参加チームの選考が終わる前に完売しています。
応募した19チームから選ばれた6チームには、24名の開発者が参加しました。その約7割を海外出身者が占め、異なる経験や視点が集まる国際色豊かな場となりました。
イベントはOrboh-JapanとRobotMateHubが共同主催し、GMO AI&ロボティクス商事がスポンサー、会場提供、運営を担当。Unitree Roboticsが実機提供と技術協力を行いました。参加費は無料で、開発者がヒューマノイドへ直接触れられる機会として実施されました。
3台の「Unitree G1」を分け合う開発現場
使用された「Unitree G1 EDU」は、29自由度を備えた二足歩行ヒューマノイドロボットです。オープンAPIとSDKに対応し、Pythonなどによる制御が可能な研究・開発向けの機体です。第1回の2台から3台へ増強され、今回は2チームで1台を共有する体制が組まれました。
初日は、ルール説明とG1の使い方に関するレクチャーを経て開発がスタート。正午から午後10時まで、各チームは30分単位の予約枠を使い、限られた実機時間の中で実装と検証を重ねました。
2日目は開発スプリントに続き、午後2時から全チームが実機デモを披露しました。動作が予定通りに進むか、その場で確かめられる点は実機ハッカソンならではです。アイデアだけでなく、現実の機体が持つ制約と向き合いながら形にする力も試されました。
災害時の被災者探索に挑んだ「Rescue G1」

最優秀賞に選ばれたのは、災害レスキュー支援をテーマにした「Rescue G1」です。瓦礫を模した環境をG1が歩き、画像認識によって被災者を発見すると、指差しと音声で報告する一連のデモを行いました。
想定されたのは、救命活動で特に重要とされる災害発生後の初期72時間です。歩行制御、画像認識、音声報告に加え、G1と探索用Webアプリケーションを連携。被災者を探し、発見を人へ伝えるまでの流れを実機上に構築した点が評価されました。

準優秀賞の「Snow Guard」は、玄関前や階段を除雪する「Humanoid Snow Assistant」を実演しました。古典制御を軸に、ロボットシミュレーター「Isaac Sim」での検証と、3Dプリンターで製作した独自パーツを組み合わせています。高齢化が進む豪雪地域での雪かき事故に目を向け、現在のヒューマノイドが持つ制約も踏まえながら自動化へ挑みました。
介護から心の整理まで広がった6つの発想

参加6チームのうち4チームが、介護や高齢化に関わる課題を選んだことも今回の特徴です。「G1 Mimamori Copilot」は、介護施設における転倒の兆候や応答がない状態を認識し、声かけと介護者への通知を選択する仕組みを、VLAと模倣学習によって実装しました。
「Spark」は、音声指示を受けて高齢者の身の回りの片付けを支援するアシスタントを開発しました。本番までに学習の完了には至らなかったものの、ROS 2とLeRobotを使い、難度の高い実機マニピュレーションに取り組みました。

「MotionLink」は、音楽に合わせて体操を先導し、参加者の動きを認識して一人ひとりへ声をかける集団体操のファシリテーターを提案しました。「ロボットgogogo」は、悩みを聞いたG1が、おみくじの色とLLMによる解釈を通じて気持ちの整理を手伝う「AIおみくじ巫女」を披露。防災や介護といった身体的な支援だけでなく、交流や心のケアにまで発想が広がりました。
<イベント概要>
イベント名:Humanoid Hack Tokyo 2
開催日:2026年7月11日(土)・12日(日)
会場:GMOヒューマノイド・ラボ 渋谷ショールーム
主催:合同会社Orboh-Japan、RobotMateHub
協力:GMO AI&ロボティクス商事、Unitree Robotics
使用ロボット:Unitree G1 EDU 3台
参加者:6チーム24名(応募19チームから選考)
事前登録:236名
参加費:無料
実機との試行錯誤が映したフィジカルAIの現在地
同じ3台のG1を使いながら、6チームから生まれたデモはそれぞれ異なりました。歩行や物体操作だけでなく、人を見守る、体操を促す、悩みに耳を傾けるなど、ヒューマノイドの用途を一つに限定しない多様さが印象的です。一方で、限られた開発時間や実機の制約に向き合う姿からは、アイデアを現場で動く形へ変える難しさも見えてきます。
介護、防災、除雪といったテーマが多く選ばれたことは、開発者がロボットを単なる技術展示ではなく、人の命や日々の暮らしを支える存在として捉え始めている表れともいえそうです。完成度だけでなく、試し、失敗し、改善する過程を共有できる場は、技術と人材の双方を育てます。今回生まれた試作や交流が次の開発へつながり、ヒューマノイドにできることを少しずつ具体化していくのか、今後が気になるところです。

