
日本酒がずらりと並ぶイベントは、飲み比べの楽しさがある一方、「どれから試せばよいのだろう」「辛口や甘口以外の違いが分からない」と迷うこともあります。蔵や銘柄に詳しくなくても、自分が口にしたときの印象を手がかりに次の一杯を選べたら、日本酒との距離はもう少し縮まるかもしれません。
そんな新しい選び方を体験できる企画が、2026年9月19日に新潟県長岡市のアオーレ長岡で開催された「越後長岡酒の陣2026」に登場しました。SCENTMATIC株式会社は、ソムリエAI「KAORIUM for Sake & Wine」を活用し、来場者が自分の好みに合う日本酒を探せる唎酒体験を提供しました。
14蔵・約60種類が集まった長岡の日本酒イベント
「越後長岡酒の陣」は、新潟県内でも多くの酒蔵が集まる長岡市で、年に一度開催される日本酒イベントです。2026年は全席のチケットが完売し、会場には長岡市の14蔵から約60種類の日本酒が集まりました。
来場者は蔵人との会話や飲み比べに加え、地元食材を使った料理との組み合わせも楽しみました。造り手の話を直接聞きながら、地域ごと、銘柄ごとの個性に触れられることは、酒蔵が集まるイベントならではの魅力です。
一方で、選択肢が豊富だからこそ、次に何を飲むか迷う場面も生まれます。そこで今回、その人自身の感覚を日本酒選びの手がかりに変える役割を担ったのが「KAORIUM for Sake & Wine」です。
飲んだ印象から始まる“自分好み”の一本探し
体験では、来場者がまず日本酒を味わい、感じ取った印象をKAORIUMへ入力します。AIがその内容をもとに好みを可視化し、来場者は「好みのタイプのMAPから探す」「一覧から探す」という方法で、次に味わいたい一本を選びました。
銘柄の知名度やラベルだけに頼るのではなく、「自分がどう感じたか」を出発点にできることが特徴です。風味の違いを言葉や画面上の情報で捉えられるため、専門的な知識がなくても選択肢を絞り込みやすくなります。
会場では一般の来場者だけでなく、蔵元もこの仕組みを体験しました。診断結果を見ながら次の日本酒を選んだり、これまで知らなかった銘柄に目を向けたりする姿が見られたといいます。AIによる診断が答えを決めるのではなく、新たな一杯へ進むきっかけとして使われていた様子がうかがえます。

「普段は選ばない銘柄」との出会いを後押し
KAORIUMを使った体験は、日本酒に詳しい人だけでなく、普段あまり飲む機会がない人にも利用されました。特に女性の来場者から好評だったといい、「自分の好みが分かりやすく、次に飲むお酒を選びやすかった」「普段は選ばない銘柄を試すきっかけになった」といった声が寄せられました。
日本酒を飲み慣れていない人にとって、数多くの銘柄から一つを選ぶことは簡単ではありません。味わいの表現や銘柄ごとの違いを理解しにくいことが、興味はあっても最初の一歩を踏み出せない理由になる場合もあります。
自分の感覚が言葉や図で示されれば、詳しい知識がなくても「次はこのタイプを試してみよう」と考えやすくなります。いつもの好みを知るだけでなく、これまで候補に入らなかった銘柄へ自然に目を向けられる点も、今回の体験で印象的な部分です。
感性と言葉をつなぐ「KAORIUM」の仕組み

「KAORIUM for Sake & Wine」は、日本酒やワインの風味を言葉で可視化し、好みに合うお酒探しを支援するAIシステムです。人の感性と蓄積された言語データを取り入れたAIにより、お酒の風味データと利用者の好みを組み合わせます。

味わいや香りは感覚的なものであり、感じたことをうまく説明できない場合もあります。そうした曖昧な感覚を分かりやすい言葉や視覚情報に置き換えることで、初心者から愛好者まで、それぞれの楽しみ方を広げられるよう設計されています。
知識の有無を超えて日本酒を楽しめる入口へ
今回の取り組みで興味深いのは、AIが日本酒を評価したり、全員に同じ銘柄を薦めたりするのではなく、一人ひとりの感覚を選択の手がかりにしていることです。造り手の説明を聞く、料理との相性を楽しむ、銘柄の背景を知るといった従来の魅力に、自分の好みを言葉で確かめる体験が加わりました。
日本酒に詳しくない人にとって、知識を増やしてから選ぶのではなく、まず味わい、感じたことから次の一本へ進める仕組みは親しみやすい入口になりそうです。普段なら手に取らない銘柄との偶然の出会いも、日本酒イベントの楽しみの一つです。人と蔵、そして新しい味をつなぐ補助役としてAIが活用されることで、日本酒選びはより自由で身近な体験になっていくのかもしれません。

