山から海へつながる循環づくり セントレアといなべ市の植林活動

空港と森。一見すると距離のある存在のように感じられますが、水の流れや資源の循環に目を向けると、山、川、海はゆるやかにつながっています。伊勢湾に浮かぶ中部国際空港セントレアにとっても、そのつながりは環境活動だけでなく、空港の成り立ちを振り返るきっかけにもなりそうです。

中部国際空港株式会社は、三重県いなべ市と連携し、2026年5月30日に植林活動「セントレアといなべ市のSDGsの森」づくりを実施しました。会場となったのは、員弁川上流域にあるいなべ市の梅林公園です。伊勢湾の豊かな海の未来につなげるSDGs活動として、地域との関係を改めて見つめる取り組みとなりました。

空港島造成から続く、いなべ市との縁

セントレアといなべ市の関係は、約25年前の空港島造成時にさかのぼります。いなべ市にある藤原岳の土砂が、空港島の埋立土砂の一部として使われました。さらに、滑走路や旅客ターミナルビルなどの建設に用いられたコンクリートの原料となるセメントの多くも、藤原岳の藤原鉱山で生産されたものだったとされています。

今回の森づくりは、こうした背景を持つ地域とのつながりを改めて深める機会でもありました。空港を利用する日常の中では見えにくい「支えられてきた場所」に目を向けることで、環境活動が単なる植樹にとどまらず、地域の記憶を受け継ぐ時間にもなっていたことがうかがえます。

「山づくりから始める海づくり」の5回目

セントレアの植林活動は、「山づくりから始める海づくり」をキーワードに継続されています。2022年度には木曽川上流域の長野県木曽町で始まり、2023年度は揖斐川上流域の岐阜県大野町、2024年度は長良川上流域の岐阜県郡上市、2025年度は木曽川水系飛騨川上流域の岐阜県下呂市で実施されました。

5回目となる今回は、員弁川上流域の梅林公園が舞台となりました。同公園は開花シーズンに約8万人が訪れる、東海地区最大級の梅林公園です。当日は、いなべ市在住の親子約60名と、セントレアグループの新入社員約100名が参加し、しだれ梅の苗木約90本を植樹しました。

地域の親子と新入社員が手を動かした一日

セントレアグループの新入社員が全員で植林活動に参加するのは、今回が初めてでした。参加者はグループで交流しながら苗木を植え、声をかけ合いながら作業を進めました。研修の一環として、地域との関係や、仲間と協力して社会に関わる意味を体験的に学ぶ時間にもなったようです。

植樹という行為は、すぐに大きな成果が見えるものではありません。それでも、一本ずつ苗木を植える過程には、将来の風景を少しずつつくっていく感覚があります。地域の親子と新入社員が同じ場所で手を動かしたことも、世代や立場を超えた交流として印象的です。

海のヒトデが森で若木を守る循環

今回の活動で特徴的だったのが、伊勢湾で駆除されたヒトデの活用です。植樹した梅の苗木には、鳥獣害対策として、ネットに入れたヒトデが吊り下げられました。海で厄介者とされてきたヒトデが、森の中で若木の成長を支える役割を持つという仕組みです。

海の資源を山で生かすこの方法は、山と川、海のつながりを具体的に感じさせます。SDGsという言葉は大きく聞こえることもありますが、こうした取り組みを見ると、身近な素材や地域の課題を組み合わせることで、循環の考え方が実感しやすくなるのかもしれません。現地には、活動の趣旨と思いを次世代へつなぐための記念看板も設置されました。

干潟で学んだ、川と海と空港のつながり

植林活動の後、セントレアグループ社員は環境学習として、員弁川河口域に広がる再生干潟を訪れました。場所は三重県桑名市で、現地からは約18キロ南に位置するセントレアを望むことができます。参加者は、川と海、そして伊勢湾に浮かぶ空港のつながりを体感しました。

また、干潟周辺で漁業を営む赤須賀漁業協同組合の水谷組合長から、河川と海の関係性や干潟の役割、生物多様性について説明を受けました。森に苗木を植える体験と、海辺の環境を学ぶ時間が組み合わさることで、環境保全を一つの場所だけで考えるのではなく、流域全体で捉える視点につながっていたようです。

小さな植樹から見える地域との関係

今回の取り組みは、空港を支えてきた地域へのまなざしと、伊勢湾の未来を考える環境活動が重なったものといえそうです。いなべ市の山、員弁川、桑名市の干潟、そしてセントレアが一本の流れの中で結び直されることで、SDGsの言葉も少し身近に感じられます。苗木が成長するには時間がかかりますが、その過程を地域と企業が共有していくことに意味があります。植えられたしだれ梅が、いつか梅林公園の風景の一部となり、活動の記憶を次の世代へ伝えていくことが期待されます。

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