
製造業の現場では、製品の複雑化やサプライチェーンの変化、規制対応の高度化などを背景に、部門をまたいだ情報共有の重要性が高まっています。設計、生産、調達、品質管理などのデータが別々に管理されていると、意思決定のスピードや業務改革の進め方にも影響が出やすくなります。
そうした中、PLM(製品ライフサイクルマネジメント)ソリューションを提供するArasの日本法人、アラスジャパン合同会社は、コミュニティイベント「Aras Connect Tokyo 2026」を2026年6月16日に開催しました。AI時代のデータ活用と業務変革をテーマに、ユーザー企業やパートナー企業による事例共有が行われました。
全15プログラムで共有されたPLMの現在地
「Aras Connect Japan 2026」は、PLM業界における国内最大級のコミュニティイベントとして開催されました。会場では、Aras Corporation CEOのレオン・ローリセン氏による基調講演、ユーザー企業の事例講演、アラスジャパンによる最新テクノロジーの紹介、パートナー企業による分科会、懇親会など、全15のプログラムが実施されました。
General Sessionでは、Arasが掲げる「Adaptive Intelligence」のビジョンのもと、AIやデジタルスレッドを活用した次世代PLMの方向性が紹介されました。ローコードAPI管理フレームワーク「Aras Innovator Edge」にも触れられました。
AI活用の鍵として語られたデジタルスレッド

イベント冒頭では、アラスジャパン合同会社 社長兼Aras Corporation 日本オペレーション担当副社長の久次昌彦氏が登壇しました。久次氏は、多くの企業がデジタル化やDXに取り組んできた一方で、業務、システム、データが分断されたままになっているケースもあると説明しました。
生成AIへの期待が高まる今、AIの価値を引き出すには、信頼できるデータを蓄積し、必要な場面で活用できる環境づくりが欠かせないとされています。久次氏は、顧客やパートナーとともにDXやAI活用の取り組みを共有する意義を示しました。
「Adaptive Intelligence」が示す次世代PLM

Aras Corporation CEOのレオン・ローリセン氏は、製品の複雑化や規制強化、サプライチェーンの変化が進む中で、競争力を維持・向上するにはAIの活用が欠かせないと説明しました。一方で、AIを効果的に使うためには、企業内に点在するデータやプロセスをつなぐ「デジタルスレッド」が重要になるとしています。
講演では、「Adaptive Intelligence」の考え方、「Aras Innovator Edge」、AIガバナンスへの取り組み、AIを活用したPLMの将来像が紹介されました。製品開発や意思決定のあり方を考えさせる内容でした。
日産化学とパナソニック デジタルの実践例
ユーザー企業による事例講演では、PLMを活用した業務改革やデジタルスレッド構築に向けた取り組みが共有されました。日産化学株式会社の沼尻悟氏と進士智成氏は、研究開発から生産までの技術情報やデータを一元管理し、組織横断で共有・活用することで、製品開発の効率化やスピード向上を目指す取り組みを紹介しました。
パナソニック デジタル株式会社の山本和之氏は、パナソニックグループが推進する「Panasonic Transformation(PX)」について説明しました。品目マスタやコード、BOMを共通基盤として整備し、設計・製造・調達をつなぐ考え方や、関係部門と合意形成を図りながら段階的に導入を進める姿勢が紹介されています。
分科会と展示で広がる具体的な活用像

午後の分科会では、アラスジャパンとパートナー企業各社による多彩なセッションが行われました。アラスジャパンからは、ノーコード開発スイート「Aras ProApp Designer」を活用した現場主導のアプリ開発、新たなMBOM Solutionの構想、サブスクリプションモデルによるPLM活用支援などが紹介されました。
パートナー企業からは、MBOM/BOP管理、CADデータ活用、MBD・ASPICE対応、AI活用基盤、AIを活用したE2Eテストなどの講演が行われました。会場にはArasとスポンサーによる14のソリューション展示も設けられ、講演で触れられた技術を具体的に確認できる場になっていたようです。
「ドーナツDX」から生まれた交流の時間

今回のイベントでは、クリスピー・クリーム・ドーナツ・ジャパンがドーナツスポンサーとして協賛し、特別コラボ企画「ドーナツDX」も行われました。ArasのPLMによるDXと、オフィスのコミュニケーションを活性化する「ドーナツトランスフォーメーション(DX)」を重ねた企画です。
午後のブレイクタイムには、参加者へ人気商品の「オリジナル・グレーズド®」が提供されました。Aras CorporationのCEO自らが参加者へドーナツを配る場面もあり、会場では自然な会話や交流が生まれていたと紹介されています。技術イベントでありながら、人と人が話しやすくなる余白をつくっていた点も印象的です。
<開催概要>
名称:アラス コミュニティ・イベント「Aras Connect Tokyo 2026」
テーマ:Adaptive Intelligence 進化するインテリジェンスがイノベーションを加速する
開催日:2025年6月16日(火)10:00-18:00
会場:赤坂インターシティコンファレンス
対象業界:自動車、航空宇宙・防衛、重工業、産業機器、ハイテク・エレクトロニクス、化学、医療機器、エネルギー、建設、プラント、製造業DX・スマートファクトリー関連 等
特設サイト:https://aras.com/ja-jp/lp/aras-connect-tokyo
技術と交流の両面から見えた変革のヒント
今回の「Aras Connect Tokyo 2026」は、AI活用を単なる最新技術の話題として扱うのではなく、信頼できるデータ基盤や部門を越えた情報連携と結びつけて考える機会になっていました。日産化学やパナソニック デジタルの事例からは、PLMの活用が製造業だけでなく、化学分野やグループ横断の業務改革にも広がっていることが見えてきます。講演、展示、交流が同じ場にあることで、参加者は自社の課題に引き寄せながらヒントを持ち帰りやすかったのではないでしょうか。AI時代のものづくりでは、技術そのものと同じくらい、データをつなぎ、人が知見を共有する場づくりも大切になりそうです。

