使い終えた漁網を新たな資源へ 下田海中水族館でリサイクルプロジェクト

海に囲まれた日本では、漁網は日々の漁業を支える身近な道具です。その一方、役目を終えた後の扱いについて、普段の暮らしの中で意識する機会はあまり多くありません。海に放置されたり流出したりした漁網や釣り糸、ロープなどは「ゴーストギア」と呼ばれ、海洋生物や生態系に影響を及ぼす海洋プラスチックごみの一つとして課題になっています。

こうした問題を知識だけでなく、実際に手を動かしながら考える機会が静岡県下田市で設けられました。株式会社リファインバースグループは2026年7月5日、下田海中水族館で「廃漁網の回収とリサイクルプロジェクト」を実施。地域住民や観光客など21人が、下田市のキンメダイ漁で使われた漁網の選別作業に取り組みました。

5回目を迎えた廃漁網リサイクル体験

今回のプロジェクトは、下田海中水族館の主催により2024年から行われており、今回で5回目を迎えました。会場となったのは、同水族館第一駐車場に設けられた特設会場です。午前10時から午後2時までの4時間にわたり、地域住民のほか、下田を訪れていた観光客も作業に参加しました。

リファインバースグループは、廃棄された漁網を原料とする高品質な再生ナイロンペレット「REAMIDE®(リアミド)」を製造しています。再生された素材は、アパレル製品やオフィス家具など、さまざまな製品の原料に活用されています。

漁網が新しい素材へ生まれ変わるまでには、回収するだけでなく、異物を取り除く地道な前処理が欠かせません。今回の活動には、その工程を体験することで、資源循環の仕組みやリサイクルへの理解を深めてもらう目的があります。

金具を一つずつ外す根気のいる選別作業

当日参加者が向き合ったのは、下田市のキンメダイ漁で実際に使用された漁網です。網には針や金具などの金属部品が付いているため、リサイクル工程へ送る前に、一つひとつ丁寧に取り外していきます。

今回使われた漁網には特に多くの金属部品が残っており、例年以上に時間を要する作業になりました。それでも、参加者や協力企業の人々は黙々と手を動かし、網と異物を選り分けていきました。

参加者からは「ちょうど昨日キンメダイをたくさん食べたんです! この網で漁をしているんですね!」という声も聞かれたそうです。食卓に並ぶ魚と、目の前にある漁具が結びついたことで、漁業や資源循環を身近に感じるきっかけになったことがうかがえます。

また、「この作業、集中しすぎて手が止まらなくなりますね(笑)」との感想もありました。手間のかかる工程でありながら、参加者が集中して作業する様子が伝わってきます。

15kgの漁網から約20kgの金具を分離

4時間にわたる取り組みの結果、参加者が処理した漁網は合計15kgとなりました。一方、そこから取り外された金具は約20kgに達しています。網そのものを上回る重量の金属部品が付いていたことからも、リサイクル前の選別に多くの手間が必要であることが分かります。

この作業は機械に任せるだけでは完結せず、人の手による細かな確認と分別に支えられています。参加者にとっては、廃棄物が資源へ変わる過程の一端を体験するとともに、普段目にする製品の背景にある工程を知る時間になったようです。

作業への協力のお礼として、参加者には下田海中水族館のカワウソ給餌体験用エサ引換券や、漁網から再生したテープのりなどのノベルティが贈られました。回収した素材がどのような製品になるのかを、実物を通して感じられる工夫も取り入れられています。

選別した漁網が「REAMIDE®」へ変わるまで

金具などを取り除いた漁網は、今後リサイクル工程を経て、再生ナイロンペレット「REAMIDE®」に生まれ変わる予定です。粒状に加工された素材は、アパレルや家具をはじめとする製品の原材料として、再び社会の中で利用されます。

漁網から異物を取り除き、再生素材へ加工し、新たな製品につなげる一連の流れは、廃棄物を単に処分するのではなく、資源として循環させる取り組みです。今回選別された15kgの漁網も、その循環の中に加わることになります。

リファインバースグループでは、廃漁網のほか、廃車のエアバッグからも「REAMIDE®」を製造しています。さらに、使用済みタイルカーペットや鳥の羽根、自動車内装材、ゴムなど、多様な素材を再生する事業を展開。これまで廃棄されてきたものに、別の素材としての役割を持たせる取り組みを進めています。

手を動かす体験から見えてくる資源循環

海洋ごみや資源循環という言葉は広く知られるようになりましたが、漁網に付いた金具を一つずつ外す工程まで想像する機会は、そう多くありません。今回の活動で印象的なのは、地域住民だけでなく観光客も参加し、下田の漁業や海の環境を身近に感じながら、その手間を共有した点です。前日に食べたキンメダイと目の前の漁網が結びついたという声には、体験を通じて社会課題が自分の暮らしへ近づく瞬間が表れています。

15kgの漁網から約20kgもの金具を取り外した実績は、再生素材が完成するまでに必要な人の手と根気を具体的に伝えています。特別な知識がなくても、選別という一つの作業に加わることで、捨てられるものが資源へ変わる過程を知ることができます。こうした身近な体験の積み重ねが、海や製品を見る目を少し変えるきっかけになるのかもしれません。

おすすめの記事