
保育園や幼稚園、認定こども園では、子どもたちと向き合う時間のほかに、日報や指導計画、研修記録、保護者対応に関わる文章作成など、多くの事務作業が日々発生しています。人手不足が続く中で、こうした業務を少しでも軽くしたいと考える園は少なくありません。一方で、AIやDXと聞くと、便利そうだと感じながらも、個人情報の扱いや現場への定着、職員の理解など、不安が先に立つ場面もあります。そうした中、towalist株式会社は、保育事業を専門とするAI導入支援サービス「AI ENwork」の提供を2026年5月から開始しました。
園経営・AI・法律の三側面から支援

「AI ENwork」は、保育園・幼稚園・認定こども園を運営する事業者を対象にした、現場伴走型のAI導入支援サービスです。園経営、AIテクノロジー、法律の3つの視点から、実務に入り込む形で支援する点が特徴とされています。
単にAIツールやITツールを導入するだけでなく、組織文化の変化まで見据えた包括的な支援を行う内容です。保育現場では、AIによって主幹業務そのものを代替することは簡単ではありません。子どもと接する仕事には、人の判断や関わりが欠かせないためです。そのため、AI導入の目的は「人の代わり」ではなく、周辺業務を整え、職員が本来注力したい仕事に時間を向けやすくすることにあります。
導入後の運用まで見据える必要性

発表内容によると、保育事業者がAI導入に向き合う際には、AI・ITリテラシーの啓発、セキュリティリスクへの対応、コンプライアンス体制の構築などが課題になるとされています。これらは一つずつ切り離して考えるのではなく、組織全体で同時に整えていく必要があります。
また、AIは導入して終わりではなく、日々の業務フローに自然に組み込まれて初めて効果が見えやすくなります。園ごとの運営方針や既存のICTシステム、職員の習熟度に合わせて、使い方を調整し続けることも重要です。変化の速いAI技術を、自園に合う形へ継続的にアレンジしていく姿勢が求められます。
文書作成から広報・業務設計まで
「AI ENwork」では、保育現場で負荷が大きい書類・文章作成や管理業務、属人化しやすい法務・労務リスク、経営者の意思決定支援などを対象に、AIと専門知見を組み合わせた支援を行うとされています。
具体的には、議事録、日報、指導計画、研修記録簿、メール作成などの文書作成業務について、保育・福祉分野に合わせたカスタマイズを行います。箇条書きのメモや音声入力をもとに、業務日誌や指導計画を作成できる仕組みも想定されています。日々の記録にかかる負担が軽くなれば、職員の時間の使い方にも変化が生まれそうです。
さらに、利用中のSaaSサービスを整理し、AIエージェントを活用した柔軟な業務システムを構築する支援も含まれます。既存の業務フローを見直しながら、広報やマーケティング、事務処理を含めた運営全体の仕組みを整える狙いがあります。
経営判断を支えるAIアシスタントも構築
同サービスでは、経営判断を支えるAIアシスタントの構築も紹介されています。財務数値をもとにした判断支援、制度改正や自治体からの通知、義務化対応に関する内部監査用AI、アイデア出しや調査のための壁打ちAIなど、園や法人の状況に応じた活用が想定されています。

実装にあたっては、現在利用しているICTシステムやクラウドサービスを活かしながら、複数のAIツールを組み合わせる形を取ります。AIストラテジストやAIデリバリーエンジニアなどの担当者が2〜3名で伴走し、現場への定着まで支援する流れです。導入初期だけでなく、運用フェーズまで見据えている点は、保育事業者にとって安心材料になりそうです。
保育現場ならではの難しさに寄り添う視点

towalist株式会社の代表取締役CEOである福井渉さんは、保育事業経営に携わってきた経験から、保育運営や現場業務には一般企業のデスクワークとは異なる難しさがあるとコメントしています。バックオフィス領域では重複作業が多く、AI導入による効率化が見込める一方で、連絡帳のように保育士自身の言葉で伝えたい文章コミュニケーションもあると述べています。
こうしたコメントからは、AIを一律に導入するのではなく、保育の現場にある温度感や園ごとの考え方を踏まえながら活用していく姿勢がうかがえます。業務効率化と、人の言葉で伝えることの大切さ。その両方を見ながら支援を進めていく点が、「AI ENwork」の特徴といえそうです。
保育事業専門AI導入支援サービス「AI ENwork」
サービスサイト:https://ai-enwork.com/
保育の時間を支えるためのAI活用へ
今回の発表を通して印象的なのは、AIを「人の仕事を置き換えるもの」としてではなく、保育に関わる人が本来向き合いたい時間を支える存在として捉えている点です。日報や指導計画、研修記録などの作成に追われる時間が少しでも軽くなれば、子どもたちの様子を見つめたり、職員同士で話し合ったりする余白も生まれやすくなります。一方で、連絡帳のように人の言葉だからこそ伝わる場面もあります。便利さだけを急ぐのではなく、園ごとの考え方や保育観に合わせて、AIと人の役割を丁寧に分けていくことが大切になりそうです。「AI ENwork」は、その一歩を現場に近いところから支えるサービスとして、今後の広がりが気になる取り組みです。

