
都市の中で日常的に目にするコインパーキング。便利な移動手段を支える一方、地面をアスファルトで覆う一般的な駐車場では、雨水が地中へ浸透しにくくなります。豪雨時の雨水流出やヒートアイランド現象など、都市が抱える環境課題を考えると、駐車場のつくり方にも新しい選択肢が求められているのかもしれません。
そうした中、都市の空き地や遊休地を活用したシェアフォレストを運営するComoris DAO合同会社は、環境配慮型コインパーキング「Comoris Parking」を2026年10月28日、東京都渋谷区代々木上原に本格オープンします。駐車場としての収益性を保ちながら、雨水を地中へ戻し、生きもののすみかや地域の交流が生まれる場所を育てる取り組みです。
都市の駐車場を「小さな森」に変える土地活用
「Comoris Parking」の大きな特徴は、駐車スペースと都市の緑地をひとつの場所に組み合わせた点です。今回オープンする代々木上原の施設は、面積約180平方メートル、最大6台が利用できる24時間営業のコインパーキングです。


一般的な駐車場では、施工や管理のしやすさから地面全体をアスファルトで舗装する方法が広く採用されています。しかし、アスファルトは雨水が地中へ浸透するのを妨げるため、短時間に大量の雨が降ると下水道や河川へ水が集中しやすくなります。
そこで同施設では、アスファルトで地表を覆わない独自の「有機レイヤード舗装」を採用しました。駐車場というモビリティインフラに、小さな森が人と自然、人と人とのつながりを育むアーバンフォレストの役割を重ねています。
駐車場の収益の一部を緑地の維持や環境改善へ還元することで、経済的な土地活用と、生物多様性の保全、災害に強いまちづくり、地域コミュニティの活性化を両立させる考えです。

自然素材を三層に重ねる「有機レイヤード舗装」
有機レイヤード舗装には、石や瓦チップ、炭、落ち葉、ウッドチップなど、性質の異なる自然由来の素材が使われています。これらを層状に重ね、車の重さを支える強度を確保しながら、雨水や空気が地中へ届く環境をつくります。

舗装は、雨水を受け止める表面の「浸透レイヤー」、車両を支えながら水の通り道を確保する「構造レイヤー」、水と空気を地中深くへ導く「循環レイヤー」の三層構造です。雨水をその場で受け止めて地中へ浸透させることで、豪雨時の流出量を抑え、都市型水害のリスク軽減につなげます。

水と空気が土の中を巡れば、植物の根や微生物も育ちやすくなります。駐車場に必要な機能を保ちながら、自然の循環を支える土壌環境も整える仕組みです。
車を停めにくい余白から生まれる小さな緑地
敷地の角や変形した部分など、車を停めにくいスペースには、木々や草花を楽しめるコンパクトな植栽が設けられます。土地の余白を緑地として活用し、鳥や虫をはじめとする生きものの生息環境を都市の中に少しずつ増やしていく試みです。
Comoris DAOは、この取り組みを通じて、2030年までに陸と海の30%以上を健全な生態系として保全する国際目標「30 by 30」への貢献も目指しています。
緑地は環境保全のためだけの場所ではありません。近隣の人が立ち寄り、自然に触れながら交流できるコミュニティの場としての役割も想定されています。無機質になりやすい駐車場の一角に木々や草花があることで、いつもの街角の印象も少し変わりそうです。

駐車場の役目を終えた後まで考える資材循環
土地の暫定利用では、売却や建築に伴って駐車場を撤去するケースがあります。「Comoris Parking」では、利用を終えた際にも、舗装に使った石やウッドチップ、植栽などを原則として廃棄しません。
回収した資材は、次の開発地に設ける緑地や、別の駐車場などで再利用する計画です。駐車場をつくる時点だけでなく、撤去後まで見据えて資源を循環させる点も特徴といえます。
導入対象として想定されているのは、開発までの暫定利用地や遊休地、寺社の敷地、建物を建てにくい不規則な形状の土地などです。空き地の管理や草刈り、不法投棄、固定資産税などに悩む土地所有者に向け、現地調査と収益シミュレーションも無料で実施されます。
土の中の水と空気に目を向けた造園家の監修
「Comoris Parking」の設計と施工は、造園家で「木び土」代表の稲村純一さんが監修しました。庭園や山林、商業施設の緑化などで培ってきた、土の中の水と空気の流れを重視する考え方が生かされています。

稲村純一(いなむら・じゅんいち)|木び土 代表
栃木県宇都宮市出身。造園設計事務所で庭園デザインや土中環境を生かした環境づくりを学び、2022年に「木び土」を設立しました。個人邸の造園をはじめ、山林管理への助言、商業施設の緑化、雨水浸透環境の施工など、幅広い活動に取り組んでいます。
直売所や緑の相談窓口へ広がる地域との接点
施設の開設に合わせ、駐車場を地域の交流拠点へ育てる取り組みも始まります。その一つが、東京・日の出町の「日の出アートビレッジ」と連携して進める直売所づくりです。参加者が森を歩き、多摩産材や伝統工法について学びながら、半年をかけて駐車場内の直売所を組み上げます。
また、創業100年の歴史を持つ植物専門店RENと連携し、庭やベランダ、店先の植物について相談できる「まちのみどりの相談所」も開設される予定です。駐車場内の植栽だけでなく、地域全体の緑を支える接点となることを目指しています。
企業や開発事業者、土地所有者を対象とした現地見学会は、2026年11月20日に開催予定です。一般向けのオープニングレセプションは11月22日、13時から16時まで行われます。
駐車場の価値を収容台数だけで測らない視点
駐車場は、限られた土地を一時的に活用し、街の移動を支える身近な施設です。「Comoris Parking」が印象的なのは、そこへ雨水を受け止める機能や生きものの居場所、地域の交流、資材の再利用という複数の役割を加えたことでしょう。土地の経済的価値と環境への配慮をどちらか一方に絞らず、同じ空間の中で両立させようとしています。
もちろん、一つの小さな駐車場だけで都市の環境問題が大きく変わるわけではありません。それでも、街中に数多く存在する駐車場の一部が少しずつ緑を持ち、雨水を地中へ戻す場所へ変われば、点だった取り組みがやがて地域の環境を支える面につながる可能性があります。車を停めるだけだった場所を、地域と自然の循環を育てる場所として見直す今回の試み。その使われ方や、ほかの土地への広がりにも注目したいところです。

