
空を移動経路の一つとして使う——かつては物語の中にあった光景が、少しずつ現実へ近づいています。なかでも「空飛ぶクルマ」と呼ばれるエア・モビリティは、電動化や垂直離着陸などの技術を生かし、都市部を含む新たな移動手段として開発が進められてきました。
ただ、日常の乗り物として普及するには、安全性だけでなく、機体の製造や整備にかかる費用、離着陸場所の確保など、さまざまな課題があります。こうした条件に向き合いながら、コンパクトな機体の開発を続けてきたのが、愛知県豊田市に本社を置く株式会社SkyDriveです。
同社は、経済産業省が主催する「日本スタートアップ大賞2026」において、「国土交通大臣賞(国土交通スタートアップ賞)」を受賞しました。
公開有人飛行から万博へ、積み重ねてきた開発実績
「日本スタートアップ大賞」は、次世代のロールモデルとなるような新事業を生み出した起業家やスタートアップを表彰する制度です。挑戦することの大切さや、起業家に対する社会的な評価を広めることも目的としています。
SkyDriveは、経済性を意識したコンパクトなエア・モビリティの開発を進め、2020年には日本初となる公開有人飛行試験を実施。2025年には、大阪・関西万博でデモフライトを行いました。
こうした開発実績に加え、空の移動を日常的なものにし、社会課題の解決につなげようとする取り組みが評価され、今回の受賞に至ったとされています。

首相官邸で披露された東京上空の飛行体験
首相官邸で行われた表彰式には、SkyDrive代表取締役CEOの福澤知浩さんが出席しました。
会場では、高市内閣総理大臣が空飛ぶクルマ「SKYDRIVE」のフライトシミュレーターを体験。東京上空を飛ぶ想定で、機体の操縦に触れました。


大阪・関西万博以降の進捗についても説明が行われ、高速飛行の映像や、海外を含むプレオーダー数が紹介されました。福澤さんは受賞について、開発チームやパートナー、応援する人々の協力によるものだとコメントしています。
時速100キロの安定飛行と300回を超える試験
2028年のサービス開始を目指す「SKYDRIVE(SD-05型)」は、従来の航空機よりも軽量かつコンパクトで、高い静音性を備えたエア・モビリティです。
電動化によって構造を簡素にし、機体やメンテナンスにかかるコストを抑えることが想定されています。離着陸に必要なスペースも小さく、都市部のビルの屋上や空きスペースなどをポートとして活用できる可能性があります。
製造面ではスズキ株式会社と連携し、2024年から年間最大100機を生産できるスズキグループの工場で製造を開始しました。2026年6月には実用速度域となる時速100キロでの安定飛行を確認し、累計300回を超える飛行試験を無事故で実施しています。

受賞の先に続く「日常の空の移動」への道のり
今回の受賞で印象的なのは、未来的な構想だけでなく、公開有人飛行や大阪・関西万博でのデモフライト、量産体制の整備、累計300回を超える飛行試験といった具体的な歩みが評価につながっている点です。空飛ぶクルマが日常の移動手段になるまでには、安全性の検証や認証、離着陸場所の整備、社会的な理解など、まだ多くの課題があります。それでも、実際に機体を飛ばし、製造や運航に必要な条件を一つずつ整えていく過程は、遠く感じられた未来を少しずつ身近なものにしています。2028年に予定されるサービス開始は、その構想が人々の暮らしと接点を持つ大きな節目となりそうです。官民や企業の連携を重ねながら、空の移動が日常の選択肢へと近づいていく過程そのものが、未来の交通を考える一つの手がかりになるのかもしれません。

