
旅行先で初めて目にする風景や、普段とは異なる場所から眺める街並みは、日常に新鮮な刺激をもたらしてくれます。一方で、年齢や身体の状態、移動環境などによって、遠くへ出かけることが難しい人も少なくありません。実際にその場所まで移動しなくても、目の前に広がる景色を見渡し、旅をするような時間を楽しめたら、日々の過ごし方にも新しい選択肢が生まれそうです。
そうした体験を福祉の現場へ届ける取り組みとして、360度ドローンブランド「Antigravity」は、一般社団法人デジタルステッキと連携し、8K 360°ドローン空撮映像を活用した「VR世界旅行」コラボ企画を2026年9月に開始しました。高齢者施設や自治体とのつながりを生かしながら、子どもから高齢者まで幅広い世代が楽しめる体験型コンテンツとして展開します。
移動が難しくても楽しめる「空からの世界旅行」
一般社団法人デジタルステッキは、2014年の設立以来、高齢者施設や自治体と連携し、外出や移動が難しい高齢者に向けてVRによる疑似旅行体験を提供してきました。VRを通じて普段とは異なる景色や場所に触れる機会をつくり、心身の活性化やQOL(生活の質)の向上につなげる活動です。
Antigravityは、Insta360と複数のパートナー企業によってインキュベートされたドローンブランドです。今回は、より多くの人に空を飛ぶような感覚や楽しさを届けたいという方向性がデジタルステッキの活動と重なり、両者の連携に至りました。
頭の動きに合わせて広がる360度の景色
体験には、頭の動きに合わせて視界が広がる「Visionゴーグル」と、世界各地で撮影された8K 360°ドローン空撮映像が使われます。
ゴーグルを装着して顔を左右や上下に動かすと、その動きに合わせて周囲の景色を見渡すことができます。ドローンならではの高い位置から撮影された映像により、地上から眺める旅行とはひと味違う、空を飛びながら世界各地を巡るような没入感と開放感を味わえる仕組みです。
2026年9月から福祉領域での試行が始まり、今後は自治体や地域の多世代交流イベントなどへの展開も予定されています。

12年の運用経験と8K空撮技術の組み合わせ
企画の特徴のひとつは、デジタルステッキが約12年にわたり培ってきた「福祉×VR」の現場運用ノウハウです。高齢者施設や自治体での経験を生かし、利用者一人ひとりの状態に寄り添った体験を提供します。
Antigravityは、8K 360°空撮に対応するドローン「Antigravity A1」の実機と、世界各地のパートナーが撮影した高精細な空撮映像を提供します。軽量で装着しやすいVisionゴーグルと組み合わせることで、利用者が自然に周囲を見渡せる体験を目指しています。
福祉施設の利用者だけでなく、自治体や地域イベントに参加する子どもから大人までが対象です。世代の異なる人たちが同じ景色を楽しみ、感想を交わす交流の場としての活用も期待されます。

機材提供と現場運用を分担する連携体制
企画名称は「Antigravity × デジタルステッキ『VR世界旅行』コラボ企画」です。
Antigravityがドローン機材と世界各地の8K 360°空撮映像を提供し、デジタルステッキが高齢者施設や自治体における企画・運用、VR世界旅行体験の実施を担当します。それぞれの技術と現場経験を持ち寄ることで、映像を見るだけではなく、利用者が安心して参加できる体験機会へつなげます。

「行けない場所」を身近にする新しい旅のかたち
VRによる疑似旅行は、実際の外出や旅行そのものに代わるものではありません。それでも、移動に制約がある人が見たことのない風景に触れ、空を飛ぶような感覚を味わえることには、日常へ変化をもたらす可能性があります。今回の企画で印象的なのは、最新のドローンや高精細映像だけでなく、福祉の現場で積み重ねられてきた運用経験が組み合わされている点です。
さらに、対象を高齢者に限らず、自治体や地域イベントに参加する幅広い世代へ広げていることも特徴です。同じ映像を子どもと高齢者が一緒に眺めれば、旅先の思い出や行ってみたい場所を語り合うきっかけにもなるでしょう。技術を見せることだけで終わらず、人と人との会話や好奇心を生み出す体験として、地域の中でどのように活用されていくのか注目したい取り組みです。

