全国25都道府県の官民関係者が集結 空き家再生の新たな連携モデルを共有

使われなくなった家を、地域に人を呼び込む宿泊施設や新しい事業の拠点へ変えられないか。空き家が全国各地で増えるなか、建物を直すだけでなく、運営の担い手や資金、旅行者との接点まで含めて考える必要性が高まっています。しかし、自治体、金融機関、民間事業者がそれぞれに知見を持っていても、立場を越えてつながる機会は決して多くありません。

こうした課題を話し合う場として、空き家を活用した宿泊施設のプロデュースなどを手がけるハウスバード株式会社は、2026年6月24日に「地方から始まる空き家再生イノベーションフォーラム」を開催しました。全国25都道府県から自治体や金融機関の関係者を中心に約80名が参加し、空き家活用の実践事例や地域での宿泊需要、官民連携のあり方について知見を共有しました。

約80名が地域を越えて考えた空き家活用の現在地

今回のフォーラムは、地方自治体と金融機関の関係者を対象とする招待制のイベントとして行われました。空き家問題に向き合う担当者が全国各地から集まり、地域によって異なる課題や取り組みを持ち寄りました。

登壇したのは、株式会社埼玉りそな銀行、Airbnb Japan株式会社、ハウスバード株式会社の3社です。地域金融、宿泊流通プラットフォーム、空き家活用支援という異なる立場から、最新の動向や具体的な事例が紹介されました。

空き家の活用には、不動産や建築だけでなく、資金調達、事業計画、集客、施設運営など、さまざまな要素が関わります。各分野の知見を一つの会場で共有したことが、今回のフォーラムの大きな特徴です。

地域金融機関から見た「まるごと解決」の仕組み

最初のプログラムでは、埼玉りそな銀行が「空き家まるごと解決システム」の概要と、これまでの経緯を紹介しました。地域金融機関として空き家問題にどのように向き合ってきたのか、これまでの実績や今後の展望を交えて説明しました。

空き家を事業に活用する際には、改修費用をはじめとする資金面の検討が欠かせません。一方で、金融機関は地域の事業者や自治体と日頃から接点を持ち、地域経済の状況を把握しています。そのため、資金面の支援にとどまらず、所有者や事業者、行政をつなぐ役割も期待されます。

個別の建物だけを見るのではなく、関係者を結び付けながら課題全体の解決を目指す取り組みは、空き家活用を継続的な地域事業へ育てるうえで重要な視点といえそうです。

宿泊需要の変化から探る地方の新たな可能性

続いてAirbnb Japanが、地方における宿泊市場の動向や旅行需要の変化について講演しました。空き家と宿泊施設の親和性にも触れ、既存の住宅を地域の滞在拠点として生かす可能性が示されました。

旅行者の関心が有名な観光地だけに限られず、地域ならではの暮らしや文化を体験できる滞在へ向かえば、これまで宿泊先が少なかった地域にも新たな需要が生まれるかもしれません。地域に残る家を宿泊施設として整備することは、建物の維持だけでなく、訪問者と地域との接点づくりにもつながります。

ただし、宿泊施設として継続的に利用するには、予約を受け付ける仕組みや清掃、利用者への案内など、運営面の準備も必要です。宿泊市場の動きを知ることは、空き家を「使える建物」に変えた後の事業を考える手がかりになります。

開業事例で見えてきた事業化と地域連携のポイント

ハウスバードは、地方で空き家を活用して開業した事例をもとに、事業化のポイントや開業支援の取り組みを紹介しました。自治体や金融機関と連携した事例にも触れ、実際に活用へ進むまでの流れを共有しました。

同社は、空き家を1日単位で貸し出せる宿や別荘へ再生し、施設づくりから運営までを横断して支援しています。空き家を宿泊施設に変えるには、不動産、マーケティング、デザイン、建築、施工、運営管理といった幅広い知識が求められます。

建物を改修して終わるのではなく、「誰が利用するのか」「どのように収益を生むのか」「地域との関係をどう築くのか」まで考えることが、継続的な活用の鍵になります。具体的な事例を通じた説明は、参加者が自らの地域での展開を考えるうえでも参考になったと考えられます。

官民連携で向き合う空き家再生のボトルネック

パネルディスカッションでは、「官民連携による空き家活用の可能性と課題」をテーマに登壇者が意見を交わしました。議論されたのは、空き家問題が前に進まない要因、官民連携の意義と理想的な形、活用が地域社会にもたらす影響などです。

空き家は一軒ごとに所有関係や建物の状態、立地条件が異なります。行政だけ、あるいは一つの企業だけで対応しようとしても、解決できる範囲には限りがあります。地域の状況を把握する自治体、資金や事業者との接点を持つ金融機関、改修や運営を担う民間事業者が役割を分担することで、活用までの道筋を描きやすくなります。

一方で、連携する組織が増えるほど、目的や役割を丁寧に共有することも重要です。地域ごとの事情に合った仕組みをつくるには、今回のように立場を越えて率直に課題を話し合う機会が必要なのでしょう。

「困った建物」から地域を支える資源への転換

空き家問題は、建物の所有者や自治体だけが抱えるものではありません。防災や景観、地域経済、観光、雇用などとも関わるため、幅広い関係者がそれぞれの強みを持ち寄ることが求められます。今回、全国25都道府県から約80名が集まったことからも、地域を越えて知見を共有したいという関心の高さがうかがえます。

ハウスバードは今後、フォーラムで得た知見やネットワークを生かし、自治体、金融機関、民間事業者との連携を強めながら、全国各地の空き家活用を支援する方針です。すべての空き家を同じ方法で再生できるわけではありませんが、宿泊施設や事業拠点など、その土地に合う役割を見つけられれば、空き家は地域の負担から新たな資源へ変わります。各地の実践を共有し、地域ごとの課題に応じた連携モデルを積み重ねることが、空き家を地域の未来に生かすための大切な基盤になるでしょう。

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