ゲームが地域の教科書に?沖縄の子ども45人が『テラビット』で挑んだ“問い”と越来グスクのデジタル継承

ゲームは、完成した作品で遊ぶだけのものではありません。自分の疑問を探し、答えを考え、誰かに伝わる形へ組み立てる道具にもなります。とりわけ、身近な場所や地域の歴史を題材にすれば、子どもたちにとって学びと創作が自然につながるきっかけになりそうです。

サイバーステップ株式会社は2026年7月30日と31日、沖縄県の北中城村と沖縄市で、サンドボックスゲーム『テラビット(TERAVIT)』を使った子ども向けゲーム制作イベントを実施しました。北中城村では身の回りの「なぜ?」をクイズへ、沖縄市では越来グスクの歴史をデジタル空間へと変換。2会場で計45人が参加し、同じ制作ツールを使いながら異なる地域課題と向き合いました。

2会場45人がゲームで取り組んだ地域の学び

今回のイベントは、サイバーステップホールディングスグループが創業25周年を機に始めた社会貢献プログラム「スマイルステッププロジェクト」の一環です。同プロジェクトは、子ども・若年層の育成支援を出発点に、何かへ挑戦する人や団体を支える活動として展開されています。

サイバーステップホールディングス株式会社はこれまで、沖縄県内の子ども支援施設への玩具寄附をはじめ、さんすうカフェへのPCとNintendo Switch 2の寄贈、「越来グスク歴史継承プロジェクト」への参画を進めてきました。今回の2日間は、そうした地域との接点を、子どもたちが自分で考えて手を動かす体験へつなげたものです。

使用した『テラビット』は、ブロックやパーツを組み合わせて、ワールドやゲームを自由に制作できるサンドボックスゲームです。完成した作品を公開してほかの利用者に遊んでもらうこともできます。遊び手と作り手の境界を行き来できる仕組みが、今回の学習活動に活用されました。

さんすうカフェでタブレットを操作し、クイズゲームを制作する子どもたち
さんすうカフェで『テラビット』のクイズゲームを制作する子どもたち

身近な「なぜ?」を自由研究の問いへ変換

7月30日に北中城村の「さんすうカフェ」で開かれたプログラムには、15人が参加しました。共催はさんすうカフェ、後援は北中城村教育委員会です。自由研究のテーマ探しとクイズゲームのネタ探しには、身の回りの疑問を出発点にするという共通点があります。そこで、子どもたちはゲームを作る前に、まず「何が気になるのか」を探しました。

タブレット画面を見ながらゲーム制作に取り組む子どもたちとスタッフ
子どもたちが協力しながらクイズゲームの制作を進める様子

店内を歩きながら時計や漫画、図鑑、クイズ本などに目を向け、さんすうカフェの和泉オーナーにも質問したとのことです。「ここには漫画が何冊あるのか」といった素朴な疑問も、調べる対象を定めれば一つの問いになります。オーナーからヒントを受けながら見つけた疑問をもとに、体験会用の『テラビット』ワールドでクイズゲームを組み立てました。

本棚の前で資料を見ながら和泉オーナーの話を聞く子どもたち
和泉オーナーから問いにつながるヒントを聞く子どもたち

このプログラムで重視されたのは、用意された答えを覚えることよりも、自分の周囲から知りたいことを見つける過程です。ゲーム制作が目的であると同時に、夏休みの自由研究を始める入口にもなるよう設計されていました。画面上の作品と現実の場所を行き来することで、日常の見え方を少し変える体験になったと受け取れます。

越来グスクの歴史をデジタル空間に再現

翌31日には、沖縄市の越来自治公民館で30人が参加しました。共催は越来白椿会で、沖縄県立美来工科高等学校の高校生ボランティアが当日の制作を支えました。テーマは、地域に残る越来グスクを『テラビット』の中に再現することです。

サイバーステップは、子どもたちが制作を始めやすいよう、再現の土台となるワールドを事前に用意しました。参加者はチームごとのワールドに入り、ゲームを操作しながら建物や地域の姿をデジタル空間へ形にしていきました。今回が、子どもたちによる制作の事実上の第1回だったとされています。

越来自治公民館で高校生ボランティアと子どもたちがタブレットを囲む様子
美来工科高等学校の高校生ボランティアが子どもたちの制作を支援

制作は1日で完結するものではなく、今後も子どもたちと継続する計画です。成果は2026年11月3日に開催予定の「2026沖縄市福祉まつり」で展示される予定となっています。地域の歴史を知るところから、自分たちで再現し、地域の人に見てもらうところまでが一つの流れとして組まれています。展示については、今後の正式な案内も待ちたいところです。

同じ制作ツールから生まれた2つの探究体験

さんすうカフェでは、身近なものへの疑問をクイズへ変え、自由研究のテーマ発見につなげました。一方の越来では、地域の歴史を調べて再現し、将来の展示へつなげる継続型の活動が始まりました。同じ『テラビット』を使っても、地域や参加者に合わせて目的と進め方が変わっています。

サイバーステップは、『テラビット』を遊ぶだけでなく、考え、作り、試し、誰かへ伝える体験にも使える場の一つと捉えています。今後は、子どもたちが疑問を見つけることや、地域について知って発信することなど、さまざまな創作体験への活用を検討する方針です。地域団体や教育・福祉関係者との連携も、今回の経験を踏まえて可能性を探るとしています。

水色の文字で表現されたサンドボックスゲーム『テラビット』のロゴ
ゲーム制作に使用された『テラビット』のロゴ

デジタル創作が地域を見る新しい窓に

今回の取り組みで印象的なのは、ゲーム制作が単独の技術体験で終わらず、現実の場所を観察し、他者に質問し、地域の歴史を調べる行動と結び付いている点です。北中城村では、普段なら見過ごしやすい店内の時計や本が「問い」の種になりました。沖縄市では、地域に残る越来グスクが、子どもたちの手でデジタル空間へ受け継がれようとしています。

学習効果を数値で示した活動ではないため、ゲーム制作だけで教育上の成果を断定することはできません。それでも、子どもたちが遊びに親しんだ道具を通して、自分の身近な場所や歴史へ視線を向ける設計には、デジタル教育の一つの使い方が見えてきます。完成品だけでなく、問いを見つけ、仲間と形にし、地域へ届けるまでの過程を大切にすることが、文化を次の世代へ手渡す小さな接点になりそうです。

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