みなかみ町の官民連携から誕生 「群馬 森とつながるタンブラー」が結ぶ森と水の未来

日々使うカップやタンブラーが、遠く離れた森の手入れにつながっている。そんな関係を知ると、身近な道具の見え方も少し変わるかもしれません。森林は水を蓄え、土砂の流出を防ぎ、生きものの環境を支える一方、適切に保つには間伐などの継続的な手入れが必要です。しかし、山間地域では所有者の高齢化や林業の担い手不足が進み、十分な管理が難しい森林も増えています。

こうした課題に対し、群馬県みなかみ町とスターバックス コーヒー ジャパン株式会社は、地域の森林資源を日常の製品へ生かす取り組みを進めています。その一環として、町内の間伐材や未利用材を使った「群馬 森とつながるタンブラー」が誕生しました。森、水、地域の人々、企業を一つの循環で結ぶ試みです。

町の未利用材から生まれた「森とつながるタンブラー」

みなかみ町とスターバックス コーヒー ジャパンは2025年4月、「利根川源流から始める豊かな森林と人を育む連携協定」を締結しました。これを基盤に始まったのが、森林の保全と資源活用、人材育成を一体的に進める「森のスターバックス プロジェクト」です。

同プロジェクトから生まれた「群馬 森とつながるタンブラー」には、町内の森林から切り出された間伐材や未利用材が活用されています。規格外などの理由で一般には流通しにくかった木材を細かな木片に加工し、樹脂と組み合わせた複合素材として使用。木材の配合率は51%です。

これまで十分に使われてこなかった森林資源を、毎日の生活で手に取れる製品へ変えている点が特徴です。森林保全を特別な活動として切り離すのではなく、飲み物を楽しむ時間の中へ自然に取り入れています。

一つずつ異なる風合いに映る、みなかみの森

タンブラーは、みなかみの森を思わせる木色と、スターバックス ラテをイメージした色合いでまとめられています。木材を含む素材ならではの個体差があり、一つひとつ異なる風合いを楽しめるクラフト感のあるデザインです。

背面には「みなかみユネスコエコパーク」のロゴを刻印。使う人が日常の中で、首都圏の水源地でもあるみなかみ町の森に触れられる仕様となっています。

素材の背景や産地が目に見える形で示されているため、単なる地域限定品にとどまらず、「この木はどこから来たのか」「森を手入れすることがなぜ必要なのか」と考えるきっかけにもなりそうです。木の色味や手触りを感じながら、地域の自然とのつながりを身近に受け取れる製品といえます。

コーヒーかすの堆肥化まで広がる森づくり

「森のスターバックス プロジェクト」で進められているのは、タンブラーの商品化だけではありません。未利用材を建築材として活用するための耐久試験や、店舗から出たコーヒーかすを使った堆肥づくりにも取り組んでいます。

活動には、群馬県立利根実業高等学校の生徒や、みなかみ町森林活用協議会など、地域の人々も参加しています。森から出た資源を製品へ変えるだけでなく、店舗で発生したものを再び地域に生かす循環を探っているところが印象的です。

高校生にとっても、森林の役割や地域資源の活用方法を実際の取り組みから学ぶ機会になります。行政と企業だけで完結せず、教育や地域活動へ接点を広げていることが、持続可能な森林整備を長く続けるうえで大切な土台となりそうです。

利根川源流の森を守る、三つの共通点

みなかみ町は、首都圏約3,000万人の暮らしを支える利根川源流の町です。豊かな水を将来へ引き継ぐには、源流域にある森林の手入れと適切な保全が欠かせません。一方で、町内でも森林所有者の高齢化や林業の担い手不足により、山林の放置が課題となっています。

町はこれまで、自ら山林を管理する「自伐型林業」や、木に触れながら森への理解を育てる木育などを進めてきました。こうした活動が、環境への配慮を重視するスターバックスの考え方と重なり、連携へつながりました。

さらに、みなかみ町は上越新幹線で都心から約1時間とアクセスしやすく、都市部の人々が森林の現場を訪れやすい地域です。コーヒーの大部分を占める水を大切に考える企業にとって、森と水のつながりを体感できる場所でもあります。環境への共通認識、源流の町という立地、森林を未来へ生かす姿勢の三つが、協働を支えています。

森林の現場を訪れることから始まる関係人口

スターバックスの従業員は実際にみなかみ町の森を訪れ、木の切り出しや森林整備を体験しています。製品に使う素材を受け取るだけではなく、森を手入れする苦労や、水源を守る現場への理解を深める機会になっています。

みなかみ町は、こうした継続的な交流を通じて、都市部と地域を結ぶ「関係人口」の創出にもつなげたい考えです。町外の人が地域を一度訪れるだけでなく、森の課題を知り、活動へ関わり続ける関係を育てようとしています。

阿部賢一町長は、森林放置や担い手不足は町だけで解決することが難しい課題だとしたうえで、企業や高校生、森林活用協議会と一歩を踏み出せたことを心強く感じているとコメントしています。タンブラーを通じ、多くの人にみなかみの森と水の物語を感じてもらいたいとしています。

日常の道具から森の循環を知るきっかけ

森林保全という言葉は少し遠く感じられますが、その森で育まれた水は、都市部を含む多くの人の暮らしを支えています。「群馬 森とつながるタンブラー」は、使われにくかった木材を日用品へ生かし、森林の課題を日常へ引き寄せた事例です。製品化に加え、コーヒーかすの堆肥化や建築材の試験、高校生との活動、従業員による森林整備まで組み合わされている点にも、この取り組みの広がりが表れています。大切なのは、地域資源を一度使って終わるのではなく、森を手入れする人や学ぶ人、利用する人との関係を継続させることです。タンブラーを手にしたとき、その色や風合いの向こうにある源流の森を想像することが、自然とのつながりを見直す小さなきっかけになるかもしれません。

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