宇宙から見た地球に国境はない 宇宙飛行士・漫画家・学生500人が考えた環境と未来、明治大学×パルシステムの対話

地球の環境問題を考えるとき、私たちの視線は身近な暮らしや地域に向きがちです。しかし、遠く離れた宇宙から地球を眺めると、国境のない一つの惑星としての姿が見えてきます。限りある水や空気、生態系を分かち合って生きていることも、より実感しやすくなるのかもしれません。

パルシステム生活協同組合連合会は2026年8月1日、明治大学商学部の所康弘ゼミナールと共同で「宇宙から見ればボーダレス~いのちめぐる緑と水の惑星~」を開催しました。宇宙飛行士、漫画家、ライター、大学生がそれぞれの視点から、宇宙と地球環境のつながりを語ったイベントです。会場とオンラインを合わせ、約500人が自然資源の大切さや持続可能な社会について考えました。

宇宙から見つめ直す、かけがえのない自然資源

イベントの目的は、水や空気、生き物を含む生態系などの「自然資源」が、人間の暮らしに欠かせない存在であることをあらためて確認することです。普段は当たり前にあるように感じる自然も、宇宙という広い視点から見れば、限られた環境の中に成り立っていることが分かります。

当日は、日本人で初めて船外活動を行い、国際宇宙ステーションに日本の有人宇宙施設「きぼう」を取り付ける任務にも携わった宇宙飛行士・土井隆雄さんが講演しました。その後、『機動戦士ガンダム』などで知られる漫画家・安彦良和さんと、宇宙や天文分野に詳しいライター・林公代さんを交えたクロストークが行われました。

さらに、明治大学の学生が海外の環境保全活動について報告しました。専門や世代の異なる登壇者の話を通じ、宇宙開発だけでなく、平和や共生、身近な環境への向き合い方まで考える構成となりました。

「地球は美しかった」宇宙飛行士が語った体験

宇宙飛行士・土井隆雄さん

土井さんは「宇宙を歩いたその先へ―有人宇宙活動の挑戦」と題し、宇宙での生活環境や研究活動を写真と動画で紹介しました。日本の有人宇宙活動の歩みを振り返り、日本人宇宙飛行士が国際的な宇宙開発の中で重要な役割を担ってきたことを説明しました。

初飛行となったスペースシャトル「コロンビア号」では、制御不能となったスパルタン衛星の回収を担当しました。その任務中に見た地球について、土井さんは「素晴らしく美しかったことを覚えています」と振り返っています。2回目に搭乗した「エンデバー号」の着陸が手動操作だったことにも触れ、最後の重要な場面を人間に委ねるNASAの姿勢が印象に残ったと語りました。

宇宙での食事や睡眠は、地上と大きく変わらないそうです。一方、無重力では体を動かしやすく、8時間の勤務後にも疲れをほとんど感じなかったといいます。人間が地球とは異なる環境で生活する体験は、身体や生命について考え直す機会にもなります。

木造人工衛星から考える持続可能な宇宙開発

土井さんは現在、人類が宇宙へ生活環境を広げながら、持続可能な社会を構築する方法を探る「有人宇宙学」を提唱しています。宇宙で社会を成り立たせるために必要な条件を地球にも応用することで、資源の枯渇や食料不足といった課題の解決に役立つ可能性があると説明しました。

取り組みの一つが、宇宙環境に配慮した木造人工衛星の開発です。一般的なアルミニウム製人工衛星は、大気圏へ再突入する際に金属粒子を発生させる可能性があります。木材を使うことで、こうした大気への影響を抑えることが期待されています。

2024年には、世界初の木造人工衛星「LignoSat(リグノサット)」が国際宇宙ステーションから放出されました。現在は2号機の打ち上げを目指しています。宇宙へ活動の場を広げるだけでなく、その過程で生じる環境負荷にも目を向ける姿勢が示されました。

ガンダムの制作秘話から環境と平和の議論へ

ライター・林公代さん

クロストークでは、林さんが月面を想定した閉鎖環境での作物栽培や、放射線を避けるために地下空間を活用する研究など、宇宙開発の最前線を紹介しました。土井さんは、宇宙で生活するには空気や水、電気を自ら作り出す必要があると説明します。宇宙船で使われる発電の仕組みが、地上の燃料電池自動車にも応用されている事例も挙げました。

漫画家・安彦良和さん

安彦さんは、『機動戦士ガンダム』に登場する巨大な宇宙居住施設「スペースコロニー」の着想について語りました。人工的に重力を生み出す「オニール・シリンダー」の構想を知り、宇宙移住を現実味のある設定として作品に取り入れたそうです。

話題は環境問題や共生社会にも広がりました。土井さんは、宇宙から見る地球は汚染がないように感じるほど美しい一方、地上では温暖化を実感すると説明し、地球環境を大切にしながら宇宙を目指す必要性を伝えました。安彦さんも、公害や環境問題は現在さらに重要になっているとの認識を示しました。

エクアドルの「自然の権利」を学んだ学生たち

学生によるプレゼンテーション

最後に、明治大学商学部の所康弘ゼミナールの学生が、エクアドルの環境保全活動について発表しました。エクアドルは、世界で初めて「自然の権利」を憲法に明記した国です。

学生たちは、先住民族が大切にしてきた自然思想の影響や、人間と自然が一方的に利用する側、される側ではなく、互いに恩恵を与え合う関係を築く必要性を説明しました。自然環境を守りながら地域の魅力に触れるエコツーリズムについても取り上げ、学習の成果を共有しました。

遠い宇宙から身近な暮らしを見つめる視点

宇宙飛行士が目にした国境のない地球、漫画作品に描かれた宇宙での暮らし、学生が学んだ「自然の権利」。一見すると異なる話題ですが、いずれも限られた環境の中で人間と自然がどのように共存していくかという問いにつながっています。宇宙開発は遠い未来の話に見えて、閉ざされた空間で水や空気、食料を循環させる研究は、地球上の資源を大切に使う方法を考える手がかりにもなります。美しい地球の姿を守るために必要なのは、大きな技術だけではありません。日々の暮らしで自然との関係を意識し、自分にできる選択を重ねることも一つの出発点です。宇宙から地球を眺めるように少し視野を広げることで、身近な環境の価値にもあらためて気づけそうです。

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