
物流の現場では、ECの利用拡大にともない、扱う荷物の量だけでなく形も変わりつつあります。まとめて大量に出荷するだけでなく、サプリメントやコスメ、書籍のような小さな商品を、少量ずつ高い頻度で届ける場面が増えています。一方で、倉庫内では保管スペースの確保やピッキング作業の負担、人材確保の難しさといった課題も続いています。
そうした中、株式会社ROMSの自動倉庫「Nano-Stream(ナノ・ストリーム)」が、セイノーグループの地区宅便が運営する千葉市内の物流センターに導入されました。2026年6月16日には始動セレモニーが行われ、関係者やメディアが参加するなか、テープカットや入出庫デモが実施されました。
倉庫の高さを活かす自動倉庫が始動

ナノ・ストリームは、高さ方向の空間を使った高密度保管と、効率的なピッキング作業を特徴とする自動倉庫です。ECなどのオーダーデータと連携してピッキング指示を送ると、クレーンとAGV(無人搬送車)が連動し、該当商品が入ったコンテナを作業者の手元まで自動で運びます。
地区宅便の倉庫ではこれまで、5mの天井高に対して高さ2mの中軽量棚を並べ、人が台車を押しながら商品を取りに行く形で作業していました。今回導入された設備は高さ4.7mまで活用できるため、これまで十分に使いきれていなかった上部空間を保管スペースとして生かせるようになります。
作業者が倉庫内を歩き回らずにピッキングできる点も大きな変化です。作業効率は従来比で約4倍に向上する見込みとされており、保管効率と作業負担の両面から、現場の動き方を変える設備といえそうです。
小荷物配送の広がりに応える仕組み

セレモニーでは、地区宅便の河合秀治社長が導入の背景について説明しました。コロナ禍以降、EC化率は年々上がっており、商品の販売は今後もECへ移っていくと見られています。現場では、消費者の買い方が以前より小口化し、1伝票あたりの商品が小さく少量になり、配送頻度が増えている実感があるといいます。
地区宅便では「チクタクメール便」に加え、小荷物に特化した配達サービス「コニポス」を展開しています。ポスト投函ができるサプリメント、コスメ、書籍などの発送・配達を請け負っており、EC市場の拡大や配送料の安さを背景に、取扱量も増えているそうです。
河合社長は、小さな荷物のバラピッキングがナノ・ストリームの得意分野であることに触れ、小荷物に強い点、保管効率の高さ、省人化につながる点が導入の大きなきっかけになったと話しています。小さな商品をいかに無理なく、正確に、効率よく扱うかが、配送サービスの価値にもつながっていくことがうかがえます。
「歩き回らない」作業で省人化へ

倉庫作業では、商品を探して移動する時間が積み重なることで、全体の効率に大きく影響します。ナノ・ストリームでは荷物が作業者のもとへ自動で運ばれるため、人が棚の間を歩き回る必要が少なくなります。河合社長は、これまで4人で行っていた作業を1人で対応できるようになると説明しています。
人材採用が年々難しくなり、将来的な人件費の上昇や採用コストも見込まれるなか、省人化は現場にとって重要なテーマです。単に人を減らすというより、限られた人員で安定した作業を続けられる体制をつくることが求められています。
当日の入出庫デモでは、河合社長自身もピッキング作業を体験しました。初めての操作でも、画面の案内や点灯するランプに従いながらスムーズに作業できたと紹介されています。現場に新しい設備を入れる際には、性能だけでなく、作業者が迷わず扱えるかどうかも大切な視点になります。
導入後の運用づくりまで見据えて

ROMS代表の前野洋介さんは、製品づくりで大切にしていることとして、「現場で使われ続け、当たり前の存在になること」を挙げました。物流やファクトリーオートメーションの領域で経験を積んだエンジニアたちが、ハード・ソフトの両面から、日々の運用に役立つ設備を考えてきたと説明しています。
また、自動化設備は導入してからが本番であり、実際の運用が始まると新たな課題や要望が出てくるとも話しています。設備そのものを納めて終わりではなく、現場の声を聞きながら、より良い運用へ調整していく姿勢が示されました。
今回のセレモニーは、プロジェクトのひとつの節目となるものでした。ナノ・ストリームは7月からの本格始動に向けて準備が進められており、地区宅便の小荷物配送とROMSの自動化技術がどのように組み合わさっていくのか、今後の運用が注目されます。
小さな荷物を支える現場の変化
ECの広がりによって、物流に求められる役割は少しずつ細かく、複雑になっています。今回の取り組みからは、小荷物の保管やピッキングを効率化することが、配送品質や現場の働きやすさにも関わってくる様子が見えてきます。高さを活かす保管、歩き回らない作業、省人化という要素は、どれも日々の積み重ねの中で効果が表れやすいものです。新しい設備は導入した瞬間に完成するものではなく、現場の動きや声に合わせて少しずつなじんでいくものでもあります。7月以降の本格運用を通じて、ナノ・ストリームが地区宅便の小荷物配送をどのように支えていくのか、静かに見ていきたいところです。

