
障害のある方の就労支援では、本人の得意なことや苦手なことを丁寧に見つけ、次の進路や働き方につなげていく視点が欠かせません。一方で、支援の現場では日々の対応に追われることも多く、「どの作業でつまずいているのか」「体調や環境によって結果が変わっているのか」といった細かな変化を、継続的に記録し続ける負担もあります。
そうした中、株式会社WAVE3は、就労支援事業所向けのデジタルワークサンプル&アセスメントシステム「パレットサイン(palette sign)」を、2026年6月15日から全国で提供開始しました。PCでの模擬作業に取り組む中で得られる行動データを可視化し、支援員のアセスメントを補助するSaaSです。支援を人の経験だけに委ねるのではなく、観測されたデータも組み合わせながら、本人に合った支援を考えやすくする仕組みといえそうです。
法定雇用率引き上げで問われる「定着」の視点
障害者雇用は広がりを見せている一方で、企業側には雇用率の達成だけでなく、働き続けられる環境づくりが求められています。厚生労働省の「令和6年 障害者雇用状況の集計結果」では、法定雇用率を達成した民間企業は46.0%にとどまったとされています。
さらに、2026年7月には法定雇用率が2.7%へ引き上げられる予定です。2025年10月からは新たなサービス類型として「就労選択支援」も始まり、本人に合った進路を客観的な根拠とともに見極める役割が、支援現場でより重視されていきます。こうした流れの中で、日々の作業や学習の様子をデータとして残し、支援に活かす発想は自然な広がりを持ちそうです。
支援員の経験差を補う「もう一つの目」

就労支援では、利用者がどの支援員に担当されるかを自由に選べるわけではありません。経験豊富な支援員であれば、作業ミスが続く場面でも、集中力、環境負荷、読み取りのしづらさ、作業工程の向き不向きなど、複数の視点から原因を考えられます。
ただ、そのような判断の手札は、短期間で身につくものではありません。パレットサインは、こうした経験差をすべて置き換えるものではなく、支援員が利用者の状態をより多面的に見るための補助ツールとして開発されています。人が見るべき部分を大切にしながら、データが支援の土台を支えるという位置づけです。
診断・実技・練習・記録を一つにした4つの機能
パレットサインには、支援の現場で利用者の状態を多面的に捉えるための4つの機能が用意されています。
■強みチェッカー

30問の質問を通じて、本人の強みや特性をデータとして可視化する機能です。障害福祉に特化した自己診断システムとして、支援計画や進路相談の材料になる情報を整理します。さらに、PC実務に近い模擬作業にも取り組めるため、本人の現在地を机上の評価だけでなく、実際の作業に近い形で把握しやすくなります。テストは支援員が配信する仕組みで、目標設定の納得感にもつながる内容です
■学習コース

障害者雇用を行う企業へのヒアリングをもとに、企業ニーズのある業務から逆算した実践型の学習プログラムを提供します。動画を見るだけで終わる内容ではなく、実際に手を動かす構成になっているため、どの作業でつまずいているかを確認しやすい点も特徴です。
■特訓メニュー

名刺入力やタイピングなど、業務につながるスキルを反復して練習できます。学習コースの中で苦手だった作業に、ゲーム感覚で繰り返し取り組める設計です。頑張った履歴が視覚化されるため、本人のモチベーション維持にもつながる内容とされています。
■体調記録

通所時の簡易的な体調を記録できます。作業の精度や集中のしやすさは、その日の体調とも関係します。記録項目を必要最小限にすることで、負担を抑えながら継続しやすい形を目指しています。
「判定」ではなく「観測」から始める支援

パレットサインが重視しているのは、本人を断定的に評価することではなく、観測された事実をもとに次の支援を考えることです。「この仕事に向いている、向いていない」と決めるのではなく、作業中にどのような傾向が見られたのかを示す設計になっています。
レポートも、支援員だけが読む評価書ではなく、本人と支援者が一緒に読み、対話するための資料として位置づけられています。本人が「この日は体調がよくなかった」「自分の感覚とは少し違う」と話せる余白を残すことで、データと対話の両方を支援に活かす考え方が見えてきます。
<サービス概要>
サービスサイト:https://palettesign.jp
価格:オープン価格
対象:障害者就労支援関連施設、放課後等デイサービス、自立訓練施設、自治体、障害者雇用企業など
福祉の現場にデータを添える試み
パレットサインは、就労継続支援B型施設「GIF-TECH's」を運営してきたWAVE3の現場経験から生まれたサービスです。今後は、社会や企業が求めるスキルの変化に合わせ、学習コースやワークサンプルの内容も更新していくとされています。支援の中心にあるのはあくまで人と人の関わりですが、その前段で見落としやすい傾向をデータとして残せることは、現場にとって一つの助けになるかもしれません。本人の可能性を狭めるためではなく、次の選択肢を一緒に考えるための道具として、今後の活用が気になるサービスです。

