
採用難が続く中で、企業と若者の出会い方にも変化が求められています。条件や仕事内容を並べるだけでは、働く前に抱いている不安や違和感まで届きにくいことがあります。「このままでいいのか」「なんとなく納得できない」といった小さな感情の中に、実は新しい仕事や事業の芽が隠れているのかもしれません。
札幌を拠点に福祉・介護事業などを展開するワンダーストレージホールディングス株式会社は、25歳以下の若者の「イライラ」「モヤモヤ」「おかしい」という感覚をビジネスアイデアへ育てる新企画『BREAKING WONDER(ブレイキングワンダー)』を始動しました。ピザを囲みながら本音を聞くところから始まり、採択された案には2,000万円規模の投資も視野に入れるという内容です。
ピザを囲んで始まる本音の共有
『BREAKING WONDER』は、若者に最初から完成度の高い事業計画を求めるものではありません。入口に置かれているのは、日常の中で感じる不満や違和感です。参加者はピザを食べながら、自分の中にある「ムカつき」や「もっとこうだったらいいのに」という思いを言葉にしていきます。
背景には、若手人材との接点づくりに対する課題意識があります。厚生労働省が公表した令和4年3月卒業者の就職後3年以内離職率は、新規大学卒就職者で33.8%でした。また、エン・ジャパンの調査では、退職経験者の54%が「会社に伝えなかった本当の退職理由がある」と回答しています。求人票だけでは届かない本音をどう受け止めるかが、企業にとっても大きなテーマになっています。
「発表で終わらせない」現場公開の試み
今回の企画では、2026年6月6日にRound1、6月13日にRound2が実施されました。Round1では、参加者がピザを囲みながら日頃の不満を共有しました。代表取締役兼グループCEOの佐藤肇祐さんは、本当に必要だと判断した事業であれば、2,000万円規模の投資も視野に入れると語っています。
Round2では、不満や不安がどのような感情や考え方から生まれているのかを掘り下げました。今後のRound3以降では、若者が自らの違和感をビジネスプランへ変えていく過程が、報道関係者向けに公開される予定です。単なるアイデア発表にとどめず、事業化までのプロセスを見せていく点も特徴といえそうです。
“不満”を社会課題として見つめ直す企画

『BREAKING WONDER』は、25歳以下の若者が感じる「なんかおかしい」「もっとこうだったらいいのに」という感覚を、地域や社会の課題として捉え直すオーディション型プログラムです。若者を会社に合わせるのではなく、若者の違和感から仕事をつくるという考え方が軸になっています。
佐藤さん自身も、過去の経験の中で抱いた怒りや違和感を事業に変えてきたと紹介されています。福祉が善意頼みになっている社会への疑問が、事業の原点にあったというコメントもありました。完成された経歴や起業経験よりも、日常の中で「おかしい」と感じる感覚を出発点にしているところに、この企画らしさがあります。
採用の前に仕事をつくる新しい関係性

今後は、若者の不満をより具体的なビジネスプランへと育てていきます。Round3ではメンターとともにアイデアを形にし、Round4では中間発表を行い、フィードバックを受けながら改善していく流れです。その後、個別オンラインメンタリングを経て、Final Roundでは佐藤さんの前で最終ピッチが行われます。
採択が前提ではなく、本当に事業として取り組むべきかを厳正に判断するという点も示されています。採択された案には、賞金ではなく、実装に必要な予算や社員のリソースを投じる方針です。若者の違和感から仕事をつくり、その仕事を一緒に動かすことで、企業と若者が採用の前段階から関係を築いていく取り組みといえます。
代表コメントに見る、違和感を事業に変える視点

代表取締役兼グループCEOの佐藤肇祐さんは、自身もリーマンショックや半導体不況、家族の病気、震災を経て、無一文から起業した経験を持つと紹介されています。原点にあったのは、『福祉が善意頼みになっている社会はおかしい』という怒りだったといい、その違和感を事業へ変えてきたことが、今回の企画にもつながっているようです。
佐藤さんは、不満や怒り、違和感の中にこそ社会課題の本質があると考えており、本当に必要だと判断できる課題解決事業には、賞ではなく実装に必要な予算と社員のリソースを投じる姿勢を示しています。
Final Roundまで続く今後のスケジュール

今後は、2026年6月20日にRound3としてアイデアを形にするワークショップを実施し、6月27日のRound4では中間発表を行います。7月上旬には個別オンラインメンタリングを予定し、7月18日のFinal Roundでは最終ピッチが行われます。採択されたアイデアは、WSH社員とともにプロジェクトとして実行していく流れです。若者の違和感を聞くだけでなく、事業化へ向けて段階的に伴走する設計になっています。
小さな違和感を受け止める場づくり
『BREAKING WONDER』で印象的なのは、若者の不満を否定したり、すぐに正解へ整えたりせず、まず言葉にする場をつくっている点です。採用活動というと、企業が選ぶ、若者が選ばれるという構図になりがちですが、この企画では「何に違和感を持っているのか」を一緒に見つめるところから始まります。ピザを囲む軽やかな入口と、実装まで見据えた投資姿勢の組み合わせは、地域発の事業づくりとしても興味深いものです。若者の小さな声が、どのような仕事や課題解決につながっていくのか、今後の展開が気になる取り組みです。

