治療アプリの社会実装へ DTx業界10社が共有した「事業化の壁」

スマートフォンやアプリを通じて医療を支える仕組みは、日常生活に近い場所で治療を継続するうえで、少しずつ存在感を増しています。一方で、医療機器としての承認、保険適用、医療現場での運用、患者への理解促進など、一般的なアプリ開発とは異なる課題も多くあります。

そうした中、治療アプリの研究開発などを行うCureAppは、2026年5月21日に「DTx Business Roundtable 2026」を開催しました。DTxはDigital Therapeuticsの略で、日本では「治療アプリ」と呼ばれることもあります。今回の場には、DTx業界の最前線で事業に取り組む10社が集まり、社会実装に向けた課題や今後の連携について意見を交わしました。

10社が集まり共有した「事業化の壁」

今回のラウンドテーブルは、国内のDTxプレイヤーが個別に事業化へ向き合うだけでなく、業界として連携しながら成長を目指すことを目的に開かれました。参加企業は、CureApp、BiPSEE、CaTe、DTアクシス、emol、Meiji Seika ファルマ、MICIN、沢井製薬など10社です。

参加企業には、開発初期段階の企業から、すでに商業化や薬事承認を経験している企業まで、さまざまなフェーズの企業が含まれていました。異なる段階にいる企業が同じ場に集まることで、課題の共有だけでなく、経験や知見をどう業界全体に生かしていくかという視点も生まれたようです。

開発・保険適用・販売で見えた3つの課題

セッションAでは、「なぜDTxに取り組むのか?事業化を阻む壁とは?」をテーマに議論が行われました。CureAppからは、これまでDTxを事業化する中で向き合ってきた「3つの壁」として、開発・治験、保険適用、販売に関する課題が共有されました。

開発・治験の面では、臨床試験で有意差が出ず、治験前の段階で設計を修正した製品もあったことが紹介されています。医療機器として社会に出すには、技術開発だけでなく、治療効果をどのように示すかという難しさがあります。

保険適用では、エビデンスを示しながら国と対話する重要性に加え、高血圧治療補助アプリの保険適用において、算定条件など制度面の難しさに直面した経験も語られました。販売面では、患者の認知不足、医師が処方する際の時間的制約、算定条件に関する理解促進など、医療現場と患者の双方に関わる課題が挙げられました。

医療現場の負荷をどう小さくするか

参加企業が課題や悩みを共有する時間では、DTxの社会実装を進めるために必要な考え方や、医療機関への具体的な支援について意見交換が行われました。DTxの価値をどのように伝え、医師や患者に無理なく理解してもらうかは、今後の普及において重要なテーマになりそうです。

また、単に製品を開発するだけでなく、医療現場で使いやすい販売オペレーションや支援体制を整えることも話題となりました。DTxが医療現場に新しい負担を生むのではなく、治療継続や患者支援に役立つ形で受け入れられることが、社会実装の鍵といえそうです。

次回カンファレンスに向けた共創の議論

セッションBでは、今後予定される「第1回DTxカンファレンス(仮)」で何を議論すべきかについて、2つのグループに分かれて話し合いが行われました。DTxがビジネスとして成立する道筋を示すことや、共通の販売オペレーションを構築して医療現場の負荷を軽減することなど、企業の枠を超えた協業の可能性が議題となりました。

DTxは、薬事承認や保険適用を目指すだけでなく、多様な事業モデルを模索する段階に入りつつあるとされています。医療機関やより多くのプレイヤーを巻き込みながら、業界全体でムーブメントをつくることが、今回の場で共有された方向性のひとつでした。今後のイベント情報は、Peatixを通じて案内される予定です。

業界の知見を持ち寄る場づくり

今回の「DTx Business Roundtable 2026」は、治療アプリの社会実装に向けて、各社が抱える課題を持ち寄る場となりました。開発、制度、販売、医療現場での運用といった複数の壁は、一社だけで解ききるには時間がかかるものも少なくありません。だからこそ、異なる経験を持つ企業が集まり、成功だけでなく難しさも共有する意味は大きいといえます。DTxが医療の中で自然に使われる存在になるには、製品そのものの価値に加え、使う人や届ける人を支える仕組みづくりも欠かせません。今回の議論は、その土台を少しずつ形にしていく第一歩として受け止められそうです。

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