採用せずに受付を支える、対話型AI「HITO」がつくる新しい接客の形

ホテルや商業施設、交通機関、医療機関など、人と人が直接向き合う場所では、案内や問い合わせ対応の負担が日々積み重なっています。「受付に人を置きたいけれど採用が難しい」「訪日客への多言語対応が追いつかない」「同じ質問への対応に時間を取られる」といった悩みは、現場にとって身近な課題になりつつあります。

そうした中、バーチャルヒューマンをプロデュースする株式会社Awwは、対話型AIバーチャルヒューマン「HITO(ヒト)」を2026年6月9日から提供開始しました。AIが音声で来訪者と会話し、施設案内やFAQ対応、多言語接客などを担うサービスです。「採用せずにチームを増やす」というコンセプトのもと、人手不足とインバウンド需要の高まりに対応する選択肢として紹介されています。

「採用しない採用」が生まれた背景

HITOの背景には、サービス現場で深まり続ける人材不足があります。2030年には国内で644万人の人手不足が予測され、サービス業だけでも約400万人が不足するとされています。一方で、訪日外国人旅行者数は2025年の約4,268万人から、2030年に6,000万人を目指す流れがあり、多言語での案内や接客ニーズも広がっています。

採用コストや離職率も、現場にとって軽くない負担です。中途採用には平均372万円のコストがかかり、宿泊業・飲食業では3年以内離職率が約30%とされています。人を採用しても定着が難しい状況の中で、HITOは「人の代わりに働き続けるAIエージェント」という発想から開発されたサービスです。

顔のあるAIが音声で案内する新しい接点

HITOは、バーチャルヒューマンを介してAIと音声で自然に会話できる仕組みです。来訪者が話しかけると、ASR(音声認識)、LLM、TTS(音声合成)が連動し、最短0.85秒、平均1〜2秒で返答します。事前に登録した施設情報や商品知識、FAQをもとに案内を行うため、受付や案内業務の一部を担うことができます。

対応言語は日本語、英語、中国語をはじめ、最大15言語まで広げられる内容です。来訪者が話した言語を自動で判別して返答するため、現場スタッフがすべての言語に対応しきれない場面でも、案内の入り口をつくりやすくなります。

チャットボットとの違いとして紹介されているのは、「顔がある」ことです。同じキャラクターを複数の場所に展開することで、来訪者にとって認識しやすい案内役となり、繰り返し話しかける際の心理的なハードルを下げる効果が期待されています。画面上の入力欄に質問するよりも、相手に話しかける感覚に近づく点が特徴です。

また、すべての対話は自動でデータとして蓄積されます。「いつ・何を・何語で・どう聞いてきたか」という情報が集まることで、現場の問い合わせ傾向や来訪者の関心を把握しやすくなります。接客を補助するだけでなく、将来的に自社専用AIを育てるための対話データ基盤としても位置づけられています。

ブランドの人格まで設計するサービス

HITOでは、外見や表情、話し方、キャラクター性まで設計できる点も重視されています。Awwはこれまで、Disney、KDDI、RanmaiTechnology、PlanBなど国内外の企業ブランドのバーチャルヒューマン企画・プロデュース・開発に携わってきました。自社のバーチャルインフルエンサー「imma」の制作・運用で培った知見も活用されています。

キャラクターは、レンタル、セミオーダー、フルオーダーの3プランが用意されています。既存のキャラクターを活用するだけでなく、ブランドの雰囲気に合わせて人格をつくることで、企業や施設の“顔”としての役割を持たせることができます。ホテル受付など、来訪者と最初に接する場面での活用がイメージされています。

サービスサイト:hito.aww.tokyo

人の接点を補いながら現場を支える選択肢

HITOは、人の仕事を単純に置き換えるというより、受付や案内、多言語対応のように負担が集中しやすい接点を支えるサービスとして見えてきます。人手不足が続く中で、現場スタッフが本来向き合うべき対応に集中できる環境づくりは、さまざまな施設で重要になりそうです。一方で、来訪者にとって自然に話しかけられる存在になるには、返答の正確さだけでなく、表情や声、キャラクターの印象も大切になります。Awwが培ってきたバーチャルヒューマンの表現力と、音声AIの即時性が組み合わされることで、無機質になりがちな案内体験にも少し温度を持たせられるかもしれません。顔や人格を持つAIが現場でどのように受け入れられるのか。最初の案内を担う新しい接点として、今後の活用シーンが気になる取り組みです。

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