上場企業316社のIR調査で判明 企業価値を伝えきれない企業が6割、投資家との情報格差をどう埋める?

企業が持つ技術や成長性を、投資家へどのように伝えるか。会社の価値は業績だけで決まるものではなく、事業の強みや将来の見通しを分かりやすく発信し、市場との対話を重ねることも重要です。一方、情報を開示していても十分に届かなかったり、投資家が知りたい内容との間にずれが生じたりすることがあります。

こうした企業と投資家の情報格差をテーマに、ログミー株式会社が運営するIRメディア「ログミーFinance」は、一般社団法人日本金融経済研究所と共同で「企業価値向上サミット2026」を開催しました。上場企業316社への調査結果をもとに、東京証券取引所や機関投資家、個人投資家など、それぞれの立場から企業価値向上につながるIRのあり方を考える機会となりました。

上場企業316社の調査を軸にした企業価値向上サミット

「企業価値向上サミット2026」は、2026年10月15日に開催され、会場54人、オンライン60人の計114人が参加しました。

中心となったのは、2026年8月に上場企業のIR担当者を対象として行われた「IR活動の実態についてのアンケート調査」です。有効回答は316社で、企業と投資家の情報格差や中小型株の評価、社内のIR体制など、情報発信の現場が抱える課題が調べられました。

サミットには、東京証券取引所の担当者をはじめ、機関投資家、個人投資家、IRに関わる専門家が登壇しました。調査結果を確認するだけでなく、投資家が企業に何を求めているのか、企業価値を適切な市場評価へつなげるにはどのような発信が必要なのかを、複数の視点から考える場となった点が特徴です。

8割が感じていた企業と投資家の情報格差

調査で特に目を引くのは、回答企業の80.4%が、企業と投資家の間に情報格差があると認識していたことです。また、79.4%が中小型株の過小評価を課題として挙げ、60.1%は自社の企業価値を十分に伝えられていないと回答しました。

企業価値が適切に評価されない要因については、「情報発信不足」が55.1%で最も多く、「流動性の低さ」が44.9%で続きました。決算情報などを公開するだけでは、企業の強みや成長戦略まで十分に理解してもらえないケースがあることがうかがえます。

一方、76.6%が個人投資家向けIRの重要性が高まっていると認識していました。機関投資家だけでなく、個人投資家にも企業の考えや事業内容を伝える必要性が意識されているようです。誰に、何を、どのような形で届けるかという情報設計も、これからのIRでは大切になりそうです。

<調査概要>

  •  調査名:IR活動の実態についてのアンケート調査
  •  調査時期:2026年8月
  •  対象:上場企業のIR担当者(有効回答316社)
  •  実施:ログミー株式会社(ログミーFinance)、一般社団法人日本金融経済研究所

「専任者がいない」企業も多いIR現場の実情

情報発信の重要性が高まる一方で、社内体制には限りがあります。調査では、61.4%の企業が、IR専任者を置いていない、または1人だけの体制で業務を行っていると回答しました。

IRには、開示資料の作成や決算説明会への対応、投資家との面談、社内情報の収集など、幅広い業務があります。少人数でこれらを担いながら、発信の量と質を高めていくことは、担当者にとって小さくない負担です。

今回公開された調査資料には、IR体制やKPI、投資家との情報ギャップ、個人投資家向けの取り組み、AI活用など、全20問の集計結果が収録されています。2023年12月に実施した調査との比較も含まれており、企業のIRに対する考え方がどのように変化しているかを確認できる構成となっています。

上場企業316社を対象としたIR活動の実態についてのアンケート調査資料

投資家が知りたい情報とのずれをどう埋めるか

企業が伝えたい情報と、投資家が投資判断のために求める情報は、必ずしも一致するとは限りません。企業側が十分に説明したつもりでも、投資家にとって重要な情報が見つけにくかったり、事業の成長性が具体的に伝わらなかったりする可能性があります。

サミットでは、機関投資家、個人投資家、東京証券取引所という異なる立場から意見が交わされました。情報開示を充実させることに加え、投資家の関心や疑問を理解し、相手に応じた発信と対話を続けることの重要性が共有されました。

企業価値向上サミット2026でIR活動について意見を交わす登壇者3人

単に発信回数を増やすのではなく、誰に届いたのか、どの情報が読まれたのかを振り返る視点も欠かせません。アクセス数などの指標を活用しながら、発信後の反応を確認して改善することが、限られた体制の中でIRの質を高める手がかりになりそうです。

参加者の声から見えた実務へ持ち帰れる学び

開催後のアンケートでは、機関投資家や市場関係者の率直な意見を聞けたことや、東証担当者の話を通じてIRへの理解が深まったことを評価する声が寄せられました。

他社の課題や悩みを知り、自社の現在地を振り返るきっかけになったという感想も見られます。また、開示資料へのアクセス数をKPIとして検討したいなど、実務へつながる具体的な気づきもあったようです。

自社内だけでIRを見直していると、発信する側の視点に偏ってしまうことがあります。企業と投資家、取引所といった立場の異なる関係者が同じ場で意見を交わすことは、日々の業務を客観的に見直すうえでも意味のある機会だったといえそうです。

企業価値向上サミット2026の交流会で意見交換する参加者

<開催概要>

  • イベント名:企業価値向上サミット2026
  • 開催日:2026年10月15日(木)
  • 主催:ログミー株式会社、一般社団法人日本金融経済研究所
  • 参加者:会場54名、オンライン60名(計114名)
  • 主な内容:上場企業316社を対象としたIR実態調査の結果報告、投資家への期待・要望に関する議論、企業価値向上に向けたIR活動の考察、交流会

情報を「開示する」から「理解につなげる」IRへ

今回の調査からは、多くの上場企業が投資家との情報格差を感じながら、限られた人員でIR活動を担っている実情が見えてきました。資料を公開するだけでなく、事業の強みや成長戦略を相手に合わせて伝え、反応を確かめながら改善することが、企業価値への理解を深める一歩になります。

特に印象的なのは、情報発信不足を課題と捉える企業が多い一方、個人投資家向けIRの重要性も広く認識されている点です。IRは一部の専門部署だけに閉じた業務ではなく、企業の姿勢や将来像を社外へ伝える経営活動として、存在感を増しているのかもしれません。発信する企業と情報を受け取る投資家が互いの視点を知り、継続的に対話できる関係を築くことが、より納得感のある企業評価につながっていきそうです。

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