
豊かな自然や特産品は、地域にとって大切な財産です。一方で、その価値を次の世代へ引き継ぐには、環境を守るだけでなく、産業や暮らしの中で活用し、地域を支える人を育てていく必要があります。人口減少や少子高齢化が進む地域では、住民だけですべてを担うのではなく、地域外の人々と継続的な関係を築くことも重要になっています。
こうした地域資源、人のつながり、経済の循環を一つのまちづくりとして進めているのが、京都府中央部の丹波高原に位置する京丹波町です。同町は、内閣府が選定する2026年度「SDGs未来都市」に選ばれました。町土の約8割を占める森林や特色ある「食」、住民自治、関係人口を結び付けた取り組みが評価されたものです。
地域資源と住民自治を生かす京丹波町の歩み

「SDGs未来都市」は、SDGsの理念に沿って経済・社会・環境の課題に取り組み、持続可能な地域づくりを進める自治体を選定する制度です。京丹波町は今回、三つの側面を一体的に捉えながら、地域資源の循環や新たな担い手づくりを進めてきた点が評価されました。
京丹波町には、広い森林とともに、丹波くり、丹波黒大豆、京野菜などの農産物があります。また、地域住民が主体となって身近な課題に向き合う住民自治も、まちづくりを支えてきました。
人口減少や少子高齢化が進む中、同町が目指しているのは、これらの資源や仕組みを維持するだけの取り組みではありません。地域内外の多様な人々が力を合わせ、資源を未来へ受け継ぎながら、新しい活動や地域の活力につなげることを重視しています。
「守る」から「活かす」へ進む森林の循環づくり

京丹波町の環境施策を象徴する存在が、町土の約8割を占める森林です。先人から受け継いだ森林を次世代につなぐため、スギやヒノキの人工林を対象とした循環型の森林経営や、森林由来のカーボンクレジットの創出が進められています。
さらに、新エネルギーの導入や地域熱供給施設の運営にも取り組み、脱炭素と地域経済の両立を図っています。環境対策を地域の負担として切り離すのではなく、エネルギーや産業の循環に結び付けている点が特徴です。
森林に対する視点も、「守る」だけではなく「活かす」方向へ広がっています。国や他の自治体と連携し、手入れが行き届かなくなった里山広葉樹林の再生を進めるほか、国産広葉樹材の利用拡大や高付加価値化、森林文化の創造にも取り組んでいます。森林環境の再生と新たな価値の創出を同時に目指す動きです。
町の外から関わる人も地域の新たな担い手に

持続可能な地域づくりには、地域内の人だけでなく、地域外から継続的に関わる人々の存在も欠かせません。京丹波町では、町のファンクラブ「CLUB京丹波」をはじめ、農業体験や地域イベントなどを通じて、町との接点を持ち続ける「関係人口」の創出に取り組んできました。
関係人口とは、移住者や観光客に限らず、地域を繰り返し訪れたり、活動を応援したりする人々のことです。住民自治組織や地域団体とこうした人々が協働することで、それぞれの知識や経験を地域活動に生かせるようになります。
地域外の人を一時的な来訪者として迎えるだけでなく、ともに地域を支える仲間としてつながる仕組みは、新たな担い手の育成にもつながります。人手の補完にとどまらず、地域コミュニティの維持や活動の活性化に新しい選択肢を加える取り組みといえそうです。
丹波くりや黒大豆から始まる地域経済の循環

森林と並んで、京丹波町を代表する資源が「食」です。同町では、丹波くりや丹波黒大豆、京野菜などの特色ある農産物を生かし、「フードバレー構想」を進めています。
構想のもとでは、地域商社を中心としたブランドづくりや販路の拡大、町内事業者との連携が行われています。道の駅を交流の拠点として活用し、町を訪れる人を増やす取り組みや、地域の魅力を内外へ伝えるタウンプロモーションもその一部です。
農産物を生産して町外へ届けるだけでなく、加工や販売、観光、情報発信までをつなぐことで、人やモノ、経済が循環する仕組みを育てています。「食」を地域の強みとして磨きながら、多様な事業者や来訪者との接点を生み出していることがうかがえます。
選定を新たな出発点に、町長が語る地域の未来

京丹波町長の畠中源一氏は、今回の選定について次のようにコメントしています。
このたびのSDGs未来都市への選定は、町民の皆様をはじめ、地域団体、事業者、そして京丹波町を応援してくださる多くの皆様とともに積み重ねてきた地域づくりが評価されたものと受け止めています。
京丹波町には、豊かな森林や食、住民自治など、未来へ受け継ぐべき地域資源があります。これらの魅力を生かしながら、関係人口とのつながりをさらに広げ、新たな担い手を育み、持続可能な地域づくりを一層推進してまいります。
今回の選定を新たな出発点とし、町民の皆様とともに、将来世代へ誇れる京丹波町を築いてまいります。
森林・食・人の循環が描く持続可能な地域の姿
今回の取り組みで印象的なのは、環境、産業、人の課題を別々に扱うのではなく、互いに支え合う一つの循環として捉えている点です。森林を整え、資源やエネルギーとして活用することが地域経済を支え、特色ある食が新たな交流を生み出します。さらに、町の内外から関わる人々が、住民や事業者とともに地域活動の担い手となっていきます。
「SDGs未来都市」への選定は、これまでの歩みを確認する節目であると同時に、新たな取り組みの出発点でもあります。地域資源を守るだけでなく、暮らしや仕事の中で生かしながら、関わる人を少しずつ増やしていく京丹波町。その姿は、人口減少や担い手不足と向き合うほかの地域にとっても、それぞれの土地にある資源やつながりから持続可能な未来を考えるヒントになりそうです。

