
温泉や海、花火といった観光地のイメージが強い熱海ですが、近年は企業研修やワーケーション、オフサイトミーティングの開催地としても活用の幅が広がっています。普段の職場を離れることで、メンバー同士が落ち着いて対話したり、自然の中で新しい発想を得たりできることは、社内の会議室とは異なる時間の使い方につながります。
一方、企業が滞在先を選ぶ際には、宿泊施設や会議室だけでなく、「現地で何を体験できるのか」「組織としてどのような成果を持ち帰れるのか」も重要になります。こうした中、熱海市に拠点を置く株式会社コンシャスマネジメントは、行政、観光団体、地域事業者、民間企業と連携し、企業の学びや組織づくりにつながる「成果創出型オフサイト」の情報発信と受け入れ環境づくりを本格化しています。
観光だけではない熱海の魅力を企業へ発信
熱海は首都圏からアクセスしやすく、温泉に加えて海や山などの自然、地域コミュニティとの交流を一度に体験できる街です。こうした環境を生かし、従来型の会議や研修にとどまらない企業滞在の選択肢が整いつつあります。
コンシャスマネジメントが運営する地域メディア「熱海経済新聞」では、2026年から「熱海 for BIZ」をテーマとする特集を展開しています。熱海観光局やJTBへの取材を皮切りに、企業の研修やオフサイトを支える地域の事業者を紹介。Gensen & Co、AJIRO MUSUBI、たからのはたけ、PerkUPなどを取り上げ、熱海でどのような学びや組織づくりができるのかを伝えています。
観光施設を個別に紹介するだけではなく、企業の目的と地域で得られる体験を結び付けている点が特徴です。平日のビジネス需要を生み出すとともに、熱海の新たなブランド価値を育てる取り組みとして進められています。
農業と里山の循環から学ぶ「ファームケーション」

特集で紹介された地域プレーヤーの一つが、熱海市内で「たからのはたけ」を運営する説田有佳さんです。同園では「たからのはたけ里山再生循環プロジェクト」を掲げ、里山保全や農業を「農育」「食育」「木育」の視点から体験できるプログラムを展開しています。
体験は農作物の収穫だけで終わるものではありません。里山全体の循環や自然との関わりを学ぶことが重視され、企業向けにはチームビルディングや自己探求を目的とした研修も提供されています。参加者が一緒に手を動かし、自然と向き合う時間は、職場とは異なる形で互いの考え方や役割に気づく機会になりそうです。
現在は、みかん小屋を改修したコワーキングスペースや休憩施設の整備も進められています。2026年内には、農園での体験と滞在、仕事を組み合わせた「Farmcation(ファームケーション)」の拠点として本格的に始動する予定です。
場所選びから成果設計まで支える企業滞在

企業向けワーケーション・オフサイト支援を手掛けるPerkUPも、熱海での受け入れ環境づくりに加わっています。同社が運営する「コワーケーション.com」は、法人向けの合宿やオフサイトミーティングに特化したプラットフォームです。
全国の宿泊施設や研修施設、チームビルディングプログラムを掲載するだけでなく、企業ごとの目的に合わせたプログラム設計や、地域とのマッチングにも対応しています。単に滞在先を予約するのではなく、組織が抱える課題や開催目的を踏まえて「成果につながる滞在」を組み立てる考え方です。
PerkUPは、自社のオフサイトミーティングを熱海で開催した経験をきっかけに、熱海観光局、JTB、コンシャスマネジメントと連携。2026年7月には「コワーケーション.com」内に熱海エリアの特設サイトを開設しました。宿泊・会議施設と地域の体験プログラムが一体的に紹介され、企業が実際の滞在を検討しやすい環境が整えられています。
行政・観光・地域をつなぐ「熱海 for Biz」
熱海市では、熱海観光局とJTBが連携し、法人向け事業「熱海 for Biz」を推進しています。企業研修、ワーケーション、オフサイトミーティング、チームビルディングなどを通じ、「観光地・熱海」に新たな価値を加える取り組みです。
2026年度は、従来のブランドサイト「意外と熱海 for Biz」を「熱海 for Biz」へ刷新。受け入れ施設や地域プレーヤーを増やしながら、企業向けのプロモーションを本格的に展開しています。
認知拡大に向け、8月26日には東京都千代田区の九段会館テラスで「ビジネスパーソンがあえて熱海を選ぶ理由 ~熱海で学ぶ意義と価値~」も開催されます。参加費は無料で、熱海を拠点とする事業や企業研修の実践例を紹介し、「あえて熱海で学ぶ意義」をテーマにしたクロストークが行われる予定です。
滞在の先にある企業と地域双方の成果
企業研修やオフサイトでは、日常から離れること自体が目的になってしまう場合もあります。今回の取り組みで印象的なのは、宿泊場所を用意するだけでなく、農業や里山の体験、地域の人々との接点、対話のためのプログラムまでを組み合わせ、滞在後にどのような成果を持ち帰るかに目を向けている点です。
企業にとっては、組織の関係性を見直し、新しい発想を得る機会になります。地域にとっても、平日の来訪需要や事業者同士の連携が生まれ、観光とは異なる継続的な関係づくりにつながります。海、山、温泉、街の人々という熱海らしい資源に「学び」「対話」「リトリート」「ウェルネス」が加わることで、企業と地域が一方的にサービスを提供・利用する関係ではなく、ともに価値をつくる滞在の形が見えてきそうです。

