
在庫を数える――それだけの作業に思えて、実際には多くの手間と時間を要するのが棚卸です。商品を一つひとつ確認し、数量を数え、記録していく。その過程では、商品の知識や経験が求められる場面も少なくありません。特に人手不足が深刻化するなかで、限られた人数で正確に作業を進めることは、現場にとって大きな負担となっています。
さらに、棚卸は「一度きりの作業」であることも多く、後から確認や修正がしづらいという課題も抱えています。誰がどのように数えたのか、どこにミスがあったのかを検証するのが難しい――そんな状況に心当たりのある方も多いのではないでしょうか。
こうした“当たり前”に対して、新しいアプローチが登場しました。株式会社ZAICOは、AIが動画から物品を識別し、棚卸をサポートする新機能「動画でAI棚卸(ベータ版)」の提供を開始しています。スマートフォンで動画を撮影するだけで棚卸が進むというこの仕組みは、これまで人の手に大きく依存してきた作業に、新たな選択肢を提示するものといえそうです。
動画を撮るだけ?「AI棚卸」という新しい仕組み

今回登場した「動画でAI棚卸(ベータ版)」は、その名の通り、動画を活用した新しい棚卸の方法です。使い方はシンプルで、スマートフォンで棚の商品を撮影し、その動画をアップロードするだけ。AIが映像や音声をもとに物品を識別し、数量のカウントをサポートしてくれます。
従来のように、紙や端末に一つひとつ入力していく必要はありません。撮影という行為を起点に、棚卸のプロセスが進んでいく点が特徴的です。解析された結果は、在庫管理システム「zaico」のWeb管理画面に表示され、内容を確認しながら必要に応じて修正を加えることができます。最終的には、そのデータを確定させることで、棚卸の結果として反映される仕組みです。
「棚卸=数える作業」というイメージから、「棚卸=撮影して確認する作業」へ。そんな発想の転換が感じられる仕組みです。
誰でもできる棚卸へ 現場のハードルを下げる仕組み
「動画でAI棚卸」がもたらすのは、単なる効率化にとどまらない変化です。棚卸という業務そのもののあり方を見直し、「誰でもできて、後から検証できる」仕組みへと進化させている点が特徴といえます。
1.棚卸を“やり直せる業務”へ転換
動画データが記録として残ることで、棚卸は一発勝負の作業から、後から確認・修正できる業務へと変わります。数字に疑義が生じた場合も、動画を見直すことで状況を振り返ることができ、より確実な確認につなげることが可能です。
2.ガバナンス強化と分業化を実現
棚卸の様子を動画として残せることは、内部統制や監査対応の強化にもつながります。また、「現場は撮影のみ」「管理者は事務所でレビュー」といった分業体制も取り入れやすくなり、現場の負担軽減にも寄与します。
3.誰がやっても同じ精度の棚卸が可能に
AIが物品の特定をサポートすることで、経験や知識に左右されにくい棚卸が実現します。新人やアルバイトでも対応しやすくなり、特定の担当者に依存しない“属人化の解消”や、業務の標準化にもつながっていきます。
人手不足時代に求められる業務のかたちとは
近年、さまざまな業界で人手不足が課題となっています。限られた人員で業務を回していくためには、「誰でもできる仕組み」を整えることが重要になってきています。
棚卸も例外ではありません。これまでのように経験者に頼るやり方では、持続的な運用が難しくなる場面も増えていくでしょう。そうした中で、AIを活用して業務のハードルを下げる取り組みは、現場の負担軽減につながる一つの方向性といえそうです。
大がかりな変革というよりも、日々の業務を少しずつ楽にしていく――そんな現実的なDXのかたちが見えてきます。
今後の展開と広がる可能性
今回の機能はベータ版としての提供であり、今後のアップデートも予定されています。現場での使いやすさをさらに高めるため、以下のような改善が進められていく見込みです。
・AIカウント精度の向上
継続的なアップデートにより、物品の特定や数量カウントの精度がさらに高められていく予定です。
・画面上での新規在庫登録
在庫マスタに登録されていない物品についても、その場で簡単に追加登録できる機能の実装が検討されています。
・カウント要件のカスタマイズ
現場ごとに異なるカウントルールにも対応できるよう、ユーザー自身で設定できる仕組みが用意される予定です。
・AI解析完了のメール通知
解析完了後に確認用URLが自動送信されることで、待機時間のストレス軽減にもつながりそうです。
こうしたアップデートを通じて、現場の声を反映しながら、棚卸業務のさらなる効率化が進んでいくことが期待されます。
クラウド在庫管理システム「zaico」とは
今回の機能が搭載されている「zaico」は、クラウド型の在庫管理システムです。いつ、誰が、どこにいてもリアルタイムで在庫状況を確認できる点が特徴で、日々の在庫管理を効率的に行える仕組みが整えられています。
コードスキャンやアラート機能などを備えており、欠品や過剰在庫の防止、入出庫の精度向上、棚卸業務の効率化などを幅広くサポートします。こうした機能により、在庫管理の省人化や自動化にもつながっているといえそうです。
また、製造業や小売・卸、医療などさまざまな業界で導入が進んでおり、直感的な操作性や柔軟なカスタマイズ性も評価されています。累計登録社数は18万社を突破し、継続利用率は92%以上(2025年5月時点)とされており、すでに多くの現場で活用されているサービスです。
無料トライアルも用意されているため、まずは試しながら自社の運用に合うかを確認できる点も導入のハードルを下げているポイントといえるでしょう。
棚卸の風景が変わるかもしれない
スマートフォンで撮影するだけで棚卸が進む――そんな新しい手法は、これまでの在庫管理のあり方に小さくも確かな変化をもたらし始めています。現場の負担を軽減し、誰でも関われる形へと広げていくことで、棚卸という業務はより柔軟で取り組みやすいものへと変わっていくのかもしれません。
すでに多くの現場で活用されている「zaico」に、こうした新たな機能が加わることで、日々の在庫管理はさらに身近で扱いやすいものになっていきそうです。大きな変革というよりも、現場の“ちょっとした大変さ”を一つずつ解消していく――そんな積み重ねが、業務全体のあり方を少しずつ変えていくのでしょう。
棚卸という一見地味な業務だからこそ、その変化は現場にとって大きな意味を持つものになりそうです。こうした新しい選択肢が広がっていくことで、在庫管理の風景もまた、これまでとは少し違ったものへと変わっていくのではないでしょうか。

